第6回 勝ち取らないけど、やめない。
[糸井]
今ふうにするとしたら、きっと
「親父がパソコンを買ってくれないけど、 俺のほうが正しいから、 親父を説得しきったんです」
とか、そういう話になると思います。
たまには、ぶつかることや乗り越えることも必要でしょう。
だけど、誰かに被害が及ぶようなことはやっぱりよしたほうがいいと思う。
「自分」はひとりしかいないので、闘争をやってる間にほかのことができなくなっちゃいますから。
[斎藤]
ええ、それはそうです。
そんなことにかまっていたらできなかった。
それよりも、ローンのパソコンで月商3000円からスタートして、今、クオカがあるんです。
[糸井]
3000円からスタートして収入としてあてにできるまでいろいろあったと思います。
どこがいちばんの転換期でしたか。
[斎藤]
一般向けにお菓子の材料を販売しようとしたところでした。
つまり、そこでわかったことというのは、いい材料でお菓子をつくればおいしくできる、ということだったんです。
[糸井]
ああ、そこなんですよね。
[斎藤]
斎徳でも、プロ用の材料は少なからず扱っていました。
それを使うと、うちの家内もお菓子がおいしくできると言うんです。
[糸井]
これは、今日の対談のポイントの部分ですよ。
[斎藤]
ポイントの部分ですか。
[糸井]
だって、大発見でしょ、そりゃやっぱり。
太字にしといてください。
いい材料でお菓子をつくればおいしくできる。
[斎藤]
そうですね、お菓子づくりが趣味の人でも
「小麦粉なんて何でもいっしょ」
という方がまだたくさんいますから。
[糸井]
「材料じゃなくて、私の腕が上手だ」って思ってます。
[斎藤]
ええ、でも、そうじゃない部分が多いんです。
プロのシェフのレシピ本にも、薄力粉何グラム、製菓用チョコレート何グラム、と書いてあるけど、どこのどんな粉を使うかは書いてない。
だから、どんなにレシピどおりにつくっても
「あのお店のシェフの味にならない」
ということが起きたりするんですよ。
[糸井]
そうなんですよねぇ。
[斎藤]
「クオカには、なんでこんなに 小麦粉がいっぱいあるの? どこが違うの?」
と、よく言われます。
いい材料でつくればおいしくできるということは、裏返して言うと、いい材料でつくらないとおいしいお菓子はできないんだということです。
ぼくはそこをやりたいと、まず思いました。
それは、もともとお客さまから教えていただいたことなんです。
斎徳の問屋の事務所に
「小麦粉を売ってください」
「チョコレートを売ってください」
と、一般のお客さまが買いに来てくださったんです。
最初は、
「小麦粉は25キロ入りなんですけど、 こんなの買ってどうするんですか?」
と訊ねてました。
「みんなで分けるんです」
「これで焼いたらおいしくパン焼けるんで」
とか言ってらして。
[糸井]
なるほどねぇ。
(つづきます)
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