04 六花文庫 その1

お菓子の街・帯広を後にし、特急列車で約2時間半。
われわれは札幌にやってきました。

というのも、真駒内というところにある「六花文庫」に行ってみたかったからです。



ここ、六花亭が運営する図書施設なんですが、ちょっと、おもしろそうなんです。

まず、7000冊以上もあるという蔵書は、すべて「食」に関するもの。
(飯島奈美さんの『LIFE』もありました!)

本の貸出はしていないのですが、入館無料で、いつ来ても、何時間でもいられます。

本を読みながら何かあったかいものを、と思ったら300円でホットコーヒーが飲めます。
六花亭のお菓子「リッチランド」もついてきます。

でも、別に本を読んでなくてもオッケーな雰囲気ですし、われわれ取材班が訪れていたときも近所に住むおばあちゃんやおじさんたちがふらりとやってきては本を読んだり、読まないでおしゃべりしたりしてまた、ふらりと帰っていきました。



この、ちょっと不思議で、でもなんだか、とてもこころの落ち着く空間ではひとりの女性が、はたらいていました。

本のセレクトや分類といういわば「図書館司書」のような仕事をはじめ、敷地内のそうじ、建物のメンテナンス、コーヒーを出すこと、寒くなったら暖炉のお世話をすること、近所のおばあちゃんたちとおしゃべりすること‥‥とこの「六花文庫」で起こるすべての出来事にたった一人で対応している、六花亭文化広報部の日浦智子さんです。



訪れたのは11月の北海道。小雨が落ちる、肌寒い日。

まだ早い時間、ほかのお客さまはいなかったので、到着すると、薪ストーブに火を入れてくださいました。



むぅ‥‥あったかい。じんわり。
気になった本を手にとり、ソファに座っているとだんだん、まぶたが閉じてくる‥‥。

まずい、寝る。このままでは。

‥‥ということで、お仕事中の日浦さんにお願いしていくつか、おもしろそうな本を紹介してもらいました。

『尊敬する鰯・鯵・鯖のために』



[──]
尊敬する‥‥。

[日浦]
すごいでしょう?

[──]
すごいです。

[日浦]
はじめて見たとき、衝撃を受けました。

[──]
鰯・鯵・鯖が、よっぽどお好きなんでしょうか。

[日浦]
それらの食材に対する愛情にあふれた‥‥つまり、この3つの魚って、値段も安いし、たくさんとれる分、ちょっと雑に扱われてしまいがちといいますか、そんな魚たちじゃないですか。

[──]
ええ。

[日浦]
どうにかその「地位」を上げたい、と。
その一心で、この本は。

[──]
ははー‥‥。

[日浦]
なにせ
「この10年くらい、鰯に含まれるナントカ核酸が 体にいいと言われたおかげで 少ぅしだけ鰯の地位が上がってうれしい」
‥‥と、帯に書いてあるくらいです。



[──]
表紙には
「ちっとも高級じゃないけれど、 つきあい方しだいで偉大な魅力を発揮してくれる、 愛すべき魚たちへの賛歌」と。

[日浦]
ええ。

[──]
中身は‥‥。

[日浦]
ふつうのレシピ本です。

[──]
えっ、そこまで言ってるのに?
‥‥逆にすごみがありますね。

[日浦]
でも「秋刀魚」っていうと、ちょっと「しみじみ」すると言いますか、文化の香りが漂ったりしますけど、鰯などは‥‥。

[──]
ま、どちらかというと食用という感じで。

[日浦]
鯖にいたっては、ヒカリモノはダメですとか嫌われたり、猫の餌にされちゃったりするくらいでしょう?
そんな、その3匹の魚を‥‥。

[──]
尊敬する、と。

[日浦]
素晴らしいと思っています。



六花文庫



所在地  北海道札幌市南区真駒内上町3丁目1−3問合先  011-588-6666 詳しくはこちら
開館時間 10時〜17時休館日  日曜日・年末年始

<つづきます>


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