[──]
なるほど、ええ。
[小田社長]
そのためには、ケーキについてはうちなんかよりもデザインの上手いお店がたくさんあるんだから、そこから、見つけてこようよと。
つまり「探す手間」を、惜しむなと。
そういうことを、言ったんです。
[──]
あのう‥‥おかしな質問でしたらすみません。
何の世界でも
「オリジナリティが大事である」とかってよく言われると思うんですが‥‥。
[小田社長]
うちのケーキの価格レンジ、知ってる?
[──]
はい、ここに来る前に、六花亭さんの本店に寄ってきたんですけど、都内では500円とかしそうなケーキひときれが120円とか、高くても200円でした。
[小田社長]
そういう価格帯なんです。
だから、省けるコストは、なるべく省く。
[──]
つまり、デザインに「コストはかけない」と積極的に決めてる‥‥んですね?
[小田社長]
洋菓子専門店のオーナーシェフだとか、そりゃあ見事だ、腕がね。
でも、ぼくらは、その「お化粧」よりももっと本質的な部分を重視したいんです。
[──]
本質的な部分と言うのは‥‥。
[小田社長]
六花亭は「おやつ屋さん」だということ。
大切にしていることがあるなら、これなんです。
見た目のオリジナリティうんぬんよりも。
[──]
おやつ屋さん。
[小田社長]
お値段のする贈答用のお菓子を売るような
「おみやげ屋さん」じゃないからね。
[──]
なるほど。
[小田社長]
ひときれ500円もしたら、もう「おやつ」じゃないでしょう、それは。
そんな値段したら、お父さんがそんなひんぱんに買って帰れないんですよ。
[──]
月に一度のお楽しみ、になっちゃいますね。
[小田社長]
六花亭のお菓子は「おやつ」だと思ってます。
マルセイバターサンドの認知度が高いので
「おみやげ屋さん」みたいに思われてしまうことが多いんですけど、本当はそうじゃなくて、誰でも買える「おやつ屋さん」でありたいと思ってるんです。
[──]
それが、六花亭の「本質」なんですね。
[小田社長]
そのためには、お化粧にあたる「デザイン」については、コストは必要最小限に抑える。
[──]
そのぶん、ケーキとしての「おいしさ」やおやつとしての「価格」に、注力すると。
[小田社長]
そうです。
[──]
1個120円から200円だったら家族3人分のケーキが500円前後で買えますもんね。
[小田社長]
もちろん、可能な限り美しくしたいんですよ。
[──]
はい。
[小田社長]
過剰なコストはかけられないんだけど、
「用と美」を兼ね備えたお菓子。
[──]
「用と美」ですか。
[小田社長]
手間ひまかけて美しくしすぎると、こんどは、デコラティブになっていきます。
華美なお化粧にね。
すると、うちの「本質」が見えにくくなる。
[──]
つまり「おやつ屋さん」という本質が。
[小田社長]
必要最小限のよそおいでなるほど、いいねと言ってもらうのが難しい。
[──]
なるほど。
[小田社長]
さいわい、味はできてますから。
[──]
差し支えなければ、でいいんですけど、120円で利益はあるんですか?
[小田社長]
聞いたことないですね。
[──]
‥‥昔からあのお値段で?
[小田社長]
まぁ、新聞の感覚だよね。
[──]
あ、それなら「毎日」買えますね。
[小田社長]
週刊誌だって350円くらいでしょ、いま。
だから200円は越えないようにしようねってそういう感覚で決めてるから、ケーキに関しては、原価計算して
「幾ら幾らだから、幾らにしよう」というのはやってないんですよ。
[──]
つまり、お客さんに還元する商品だと。
[小田社長]
いや、「還元」という言いかたをするとちょっとちがうと思うんだけど、みなさんに食べてもらいたい商品だから、ケーキは「買いやすい値段」に設定してます。
ありがたいことに、うちには「マルセイバターサンド」をはじめ利益の出ている商品で経営を支えることができてますからね。
[──]
120円なら、小学生でも買えますもんね。
[小田社長]
ぼくたちにしたら、お客さまがお店に来てくださることがうれしいことなんです。
お客さまの来てくれない店なんて‥‥、読んでもらえないホームページとおんなじでさ(笑)。
[──]
あはは‥‥さみしいですね。
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