[ほぼ日]
はー、その発見は、すごいですね‥‥。
[田中]
そのあたりが、文具の開発の楽しさなんですよ。
[ほぼ日]
あ、聞きたいです、聞きたいです。
[田中]
いや、決してハイテクを使ってるわけじゃなく、小さなアイデアなんだけど、それを足すだけで、すごく良くなることがある。
[ほぼ日]
なるほど。文具の売り場が楽しかったり、文具の話をしてると盛り上がるのは、些細なんだけど「なるほど〜」という工夫が小さなモノのなかにいっぱい詰まってるからかもしれませんね。
[田中]
まあ、僕らは職業柄、何かを見たら、つねに何かは思うんですよ。
これ、ちょっと堅いな、とか、もう少し、小さくできるかもな、とかもっと楽にできればいいのに、とか‥‥。
[ほぼ日]
ちょっとした違和感に、敏感なんでしょうね。
へー‥‥じゃあ逆に、これ以上ないなっていう文具は、ありますか?
[田中]
これ以上ない‥‥。
[ほぼ日]
進化しきってるというか。
[田中]
あんまりそういう視点で見てないんで。
[ほぼ日]
世のなかにあるものをつねに「もっとよくなるはずだ」と思って見てる?
[田中]
そうですね。
[ほぼ日]
何かしら、あるだろうと。
[田中]
何かないと困ると思ってるくらいですので。
[ほぼ日]
なるほど‥‥それじゃあ最後に、田中さんの「ものづくり」の信条といいますか、大切にしていることがあったら、ちょっとでも、教えていただきたいのですが。
[田中]
それは、いちばん初めにお話したことですね。
つまり、なんにしても「商品」って、一生懸命に説明するといろいろと分かってもらえるんですけど、多くの場合そんな機会はなくて、商品は商品だけで、店頭に並んでしまう。
[ほぼ日]
説明なしに。
[田中]
だからこそ、説明や広告なんかなくても、お客さまがパッと見ただけで「それがなんなのか」をきちっと伝えられるような商品を作りたい。
そこに、こだわっていきたいと思っています。
[ほぼ日]
ほー‥‥。
[田中]
その商品が棚に並んでいるだけで、その商品みずから、自分のことを、説明してくれるような商品。
そういうものを、作っていかなきゃなと。
[ほぼ日]
糸井重里がずっと言ってることと似てますね。
[田中]
ほんとですか。
[ほぼ日]
はい。糸井の表現を借りると、商品に広告を練り込むんだってずっと言っていて。
広告する必要もないような商品ができたら、それが理想の商品じゃないか、というような意味で。
[田中]
あー、なるほど。たしかに、そうですよね!
たまーに、店頭の調査に行くんですけど、僕の商品を手にとってくれてるお客さまが、棚に戻しちゃう場面に出くわしたりするとね、
「ちゃんと伝わったのかなぁ」
なーんて、考え込んじゃうんですよ(笑)。
[ほぼ日]
でしょうね。
[田中]
伝わって戻されたのなら、まだいいんですけど。
そもそも伝わってなかったら、悔しいですから。
[ほぼ日]
いや‥‥今日は、ありがとうございました。
すごく、おもしろかったです。
[田中]
こちらこそ、ありがとうございました。
[ほぼ日]
次は、どのあたりを狙ってるんですか?
[田中]
そうですね、僕いま粘着系に凝ってるんで‥‥。
[ほぼ日]
粘着系に凝ってる。
[田中]
ええ、さっきのテープのりとかのことですけどね。
やっぱりそのあたりで新商品を開発したいなあと思っています。
希望としては、海外でも売れるような。
[ほぼ日]
海外に進出ですか!
[田中]
いや、そんな大それたことじゃないですけど、さっき話に出た「直感的にわかる便利さ」って言葉が通じなくても、じゅうぶんに通用する感覚だと思うんですよ。
[ほぼ日]
なるほど、なるほど。
[田中]
それにね、海外の人って、何でもホッチキスで止めることが多いんです、見てると。
[ほぼ日]
そうなんですか?
[田中]
えー、そんなちっちゃい紙切れまで?
なんて思うくらい、何でも。
[ほぼ日]
へぇー。ホッチキスで。
[田中]
それにとって代わるような、なにかを。
[ほぼ日]
なにかを。
[田中]
粘着系で。
[ほぼ日]
粘着系で(笑)。楽しみにしてます!
<終わります>
※コクヨさんのお話をうかがった連載は、今日で終了いたします。
ご愛読、ありがとうございました!
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