[中島]
そうですね。まあ、前へ出なくても、いやでも世界は降ってきますからね(笑)。
いずれ全部ね。
[糸井]
だけど、小さなものを見つけても、それを大きなことのように言いたがるのが人間の性(さが)でもあるわけで。
そうならないところが中島みゆきの言葉のすごさですね。
[中島]
わたし、ものすごい近眼だもの。
遠くが見えないから(笑)。
[糸井]
すごい資質だ(笑)。
[中島]
財産だと思ってます、はい。
たとえばテーブルの上のコーヒーカップを見ようと、顔を近づけると、テーブルの上のゴミが目についちゃったり(笑)。
こういうちっこいものが、やたらと‥‥。
[糸井]
一般的に悪いとされている、近視眼的な行為がプラスに転じてる(笑)。
[中島]
はい(笑)。だから思わぬ拾いものがあるんじゃないですかね。
まあ、目のいい人は遠くからでもそれが見えてるんでしょうけれども。
[糸井]
ノイズごと拾わざるを得ないんですね。
[中島]
そうですね。わりと身近なものしか見てないかもしれないですね。
[糸井]
ふんふんふん。
純化させちゃうとそういうものは全部排除されちゃうけど、鈍化させたら逆に見えてくるみたいな。
[中島]
あはははは。子どもの頃から近眼だったから。
星が見えなかったですもん。
[糸井]
星をあんなに語りたがるのは、じゃあ、あれは憧憬ですか?
[中島]
眼鏡かけて星を見たときの感動!
[糸井]
そうですか。
[中島]
「わぁ、星だあ!」
[糸井]
うちの妻がそういう近眼だった人で。
[中島]
あららら。
[糸井]
近眼のときにぼくと結婚したんですけどね(笑)。
その後、手術をしたんですよ。
でね、手術をした翌日に、朝起きたらベッドにカミさんがいないんですよ。
この時間に家出することもないし、居間に行ってみたら、外をね、ぽーっとした顔で見てるんですよ。
何してんの? って聞いたら、
「見える‥‥」って。
つまり裸眼で見えるっていうこと自体を楽しんでいたんです。
[中島]
そりゃあ、感動でしょうね。
[糸井]
見える‥‥っていうつぶやき、あれは5歳児の言葉でしたね。
[中島]
あはははは! うーん。
[糸井]
ぼくはそりゃあ、打たれましたね。
[中島]
昔から近眼だったんですね、きっと。
[糸井]
見えるっていうそのことに感動してるんですよ。景色じゃないんですね。
[中島]
はいはい。
[糸井]
あなたもきっとそうなりますよ、もし手術したらね。
(つづきます!)
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