[中島]
あはははは。うーん。
[糸井]
でね、そいつは茶色なんですよ。
グリーンの中の茶色いオランウータンと目が合うんです。それが好きでねー。
何かのときにそのことを思うとね、気持ちいいんです。
[中島]
なるほどー。
[糸井]
その大きさの比例配分みたいなものがね、犬のね、その犬の目線の中にあったわけですね。
あ、さっきから詞の話ばかりしてますね。
[中島]
詩人ですからねー。やっぱり。
[糸井]
みゆきさんの詞がほんとに上手だなと思うのは、俗な言葉をひょいと拾って混ぜ込むのがものすごくうまいところですね。
[中島]
はあ?
[糸井]
うまく例をあげられないんですけど、つまりー、んー、何かないかな。
♪ルージュひくたびに♪っていう詞があるじゃないですか。
(「ルージュ」という曲です)
ルージュっていうのは歌謡曲でよく使われる言葉ですよね。
で、そういうものを、すごく難しいことを言うときに密輸入して、こう、ジェムストーンのようにはめるんですよ。
どうしてこんなことができるんだって、もう、憧れちゃうんですよ。
ああいうキラキラしたものの、はめかたに。
[中島]
んなこたあないですよ!
糸井さんだって、これ、これ!
(と言って、『小さいことばを歌う場所』を出す)
[糸井]
ぼくのそれは‥‥‥‥、うーん、違うんですよー!
だから中島さんのとはー。
[中島]
違うんですの?
[糸井]
うん。つまりね、ぼくにはお客さんが見えてないんですよ。
で、みゆき様の場合にはちゃんと交流してる感じなんですよね。
[中島]
へへへへ、そうですかあ。
[糸井]
うーん。かつて音楽の世界では、オシャレな人たちや斬新な人たちが、
「それって歌謡曲っぽいよね」
と言って排除してきたものがあるわけで。
でも、中島みゆきの歌詞には、そんな理由で排除されたものを拾い上げ、輝かすような言葉づかいを感じるんですよ。
誰かが落としたあめ玉を、ゴミを払って水で洗って、ここに入れたらほらピカピカに光るよって。
[中島]
あはははは。すごいねぇ。
うれしいですね、そう言っていただけると。
[糸井]
そこが大好きだから、iPod収録曲の中でぼくがいちばん聴いているのは中島みゆきですよ。
正直に言うと。
[中島]
あららら。
[糸井]
俺の何でもなさも捨てたもんじゃないぜって気持ちになるというか。
[中島]
あはははは。
[糸井]
それは、作ってる人もそうだからだ、っていうふうにぼくは思ってて、中島みゆきという人のことに思いを馳せるんですね。
何だかうまく言えないんですが心では繋がってますから。
その、あめ玉のこととか。
[中島]
みごとなお言葉をありがとうございます!
(つづきます!)
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