[糸井]
だから、ちょっと距離を置きたくなって。
なんだろな、頭と格好とが繋がってない感じかな。
手だけで上手に書ける部分を足さないと完成品になんないような気がするときがあるんですよ。
[中島]
手が必要ですか?
[糸井]
ええ、技術というかね。
で、そっちが、ぼくの心以上に動いてくれたときに、ぼくは、爆笑するんです。
[中島]
爆笑ですか! 嬉しくって?
すごいな、天才だな、それって。
[糸井]
いやいや、そういうときって、やっぱり自分で作ったという思いがないんですよ。
手が作ってくれた。足してくれたっていう。
[中島]
はいはいはい。
[糸井]
で、みゆきさんの曲を聴いてると、もう降りてきたとしか思えないっていうね。
ぼくは、もう、まんまじゃ書けないよってところがあるんですよ。
今の話でも、聞くとそのとおりだろうなあって思うんですけれどね。
[中島]
いや、失敗もいっぱいありますよ。
[糸井]
そうですか。
[中島]
ええ、ええ。
試行錯誤ばっかりですよ、結局のところ。
[糸井]
え? 世に出たものでも、自分では実は失敗だと思うんですか?
[中島]
失敗とは違いますけど、うーん、完成品じゃない、というほうが近いのかな‥‥。
いやあ、発売しておいて、本当に申しわけないんだけど、完成品と思ったものがまだないというか‥‥。
大変失礼なんですが。
[糸井]
意外だなあ。
[中島]
作業としては、演奏とか歌とかを録音して、ミックスして、マスタリングして、そこで一旦ストップしないと、CDをつくる工場には入れられないわけで。
だけど、特にミキシングの作業なんかは凝りだしたらいつまでたっても終わらない。
なんぼでもやれちゃうんですよね。
イギリスあたりに6年も7年もやってる人なんかもいますけどねぇ。
そうやってね、キリないのはわかります、すごく。
だけどね。
[糸井]
娘はいつか嫁に出さなきゃなんない日が来るんだよね。
[中島]
そうなんですよね。
嫁入り修行いつまでもさせておきたいんですけど。
[糸井]
まだ、あんたの味噌汁には合格点はあげられないわねとか(笑)。
[中島]
そうなんですよねー。
でも歳食っちゃうんですよ、そうこうしてると、娘が。
[糸井]
そうだそうだ。
[中島]
本当に。だから見切りつけて出さなきゃなんない。
そこで、やっぱり、ああすりゃよかったな、こうすりゃよかったみたいな気持ちは残りますでしょ。
なので自分でまたCDかけて発売後に聴くのがストレスの元なんですよ。
[糸井]
それで聴かないようにしてる?
[中島]
聴くと、
「だからここはこうすればよかったのに!!」
とかね。今すぐ回収したくなっちゃうんですよー。
でも、全CDを回収したら会社潰れますからね。
零細企業なもんで(笑)。
(つづきます!)
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