[糸井]
うーん、出てないかっていうと、出てるよっていうふうにも言えるしね。
でもみんなと同じようにぼくもちょっとそういう気持ちがありますよ。
尊敬申し上げてるって意味では。
カチカチにはなりませんけど(笑)。

[中島]
先生! 何をおっしゃるんですか。
そんなあ(笑)。

[糸井]
いや、やっぱり、あのときに聞いた、みゆきさんのあの一言はずっと残ってる、みたいなのは、ぼくの中にもありますもん。
例えば、
「旅っていうのは 帰ってくるから旅なんだ」とかさ。

[中島]
そんなこと言いました?
わたし、言った端から、忘れるたちなんです(笑)。

[糸井]
ぼくもそうなんですけど。

[中島]
ははは。

[糸井]
歌詞はどうですか?
ぼくらは、歌詞の中の言葉を断片的に覚えているけど、書いた張本人のみゆきさんは、全歌詞を全編覚えているものですか。

[中島]
とんでもない。忘れます。
だから、コンサートのリハーサルは、まず歌詞を覚えるところから始めなきゃなんない。

[糸井]
素敵ですよ、それは。
だって、フォルムとしてではなく、その都度、新たに歌い直すってことだから。

[中島]
10年前に書いた歌詞でも、今その言葉を歌うとしたら、どういう気持ちかな、ってところから取り組まないと、歌えませんものね。

[糸井]
そうか、“歌手・中島みゆき”はもう一人いて、その人は曲を作る人の助けになる場合もあるし、邪魔する場合もあるとさえ言えるんですね。

[中島]
そうですね。

[糸井]
作り手からすると、
「お前ちゃんと歌えてないじゃないか!」とか?

[中島]
あ、それはあります!

[糸井]
あるんですか。

[中島]
はい。

[糸井]
どっちの自分が勝つんでしょう?

(つづきます!)

文/藤井徹貫+ダ・ヴィンチ編集部+ほぼ日刊イトイ新聞

協力/株式会社ヤマハミュージックアーティスト


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