発熱する東北(5月16日)

・『うちのカメ』という本を書いた石川良輔先生に、お話をうかがったことがありまして。先生、専門は昆虫学なのですが、カメを40年(13年前での数字)飼い続けていたんです。たくさん、その「カメコ」の写真も持っていて、見せてくれたりしましたっけ。

 で、そのカメ、石川先生の足元に近づいてきて、ひざの上で寝ちゃったりするらしい。それを「かわいい」と表現するのも石川先生なのですが、同時に科学者なので、カメは、先生のひざの「熱」を求めてやってくるんだろうという説明も、してくれちゃうわけです。カメ、変温動物ですからね、熱がほしいんですね。親ガメの背中に子ガメが乗っている光景なんかも、あれ、仲よくしているわけじゃなくて、より日光に当たろうと、他のカメの上に平気で乗っかってるんでしょうね。
  いや、この話、ぼくの感じ方の基礎になってまして。熱への欲望、熱のつくり方、熱の移動、熱の影響‥‥それを想像すると、いろんなものごとが、なんかだか、とても、とらえやすくなるんです。
 
・人が集まるところには、熱気がある。その熱のほうに、また人が集まってくるとかね。交通量が増えると、そこに摩擦熱が起きて、事故も起るかもしれないし、熱気も上がってくるとか。人間でも、熱を感じさせる人に、人が集まってるとか。逆に、冷えている場所は避けられやすいとかもね。

で、そういう目でいまの日本を見ると、東北は、いったん震災の被害で冷えきったところから、ぐんぐん熱を上げているように思えるんです。交通も、興味も、物資も、人間も、ニュースも、これまで以上に集まることで熱を発していく。むろん、場所や地域によってちがうんでしょうけれど、人びとの目が向きやすいという意味では、温度を上げやすい状況はあると思うんですよね。熱は熱を、元気は元気を呼び込むものだからなぁ。

今日も「ほぼ日」に来てくれて、ありがとうございます。ぼくは今夜、国民総幸福量世界一をめざす国へ出発します。
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