顧客の創造(4月18日)

・先月、夕方のテレビで偶然見ていて、なんども人に話している場面があります。

味噌や醤油をつくってきた老舗の会社が、あの日の地震と津波に襲われ、すべての生産手段が破壊されてしまったのでした。

工場の跡地に、従業員たちが集まっています。着の身着のままという感じです。おそらく、そこにいる人たちの周囲には、さらに大きな被害があったのだと想像します。社長が、包みを抱えてやってきます。「みんな、これがなんだかわかるかー?給料袋だぞぉ!」そう言って、紙袋を渡していきます。

そして、そこにしゃがんでいる社員に向って、「見た通り、(何代も続いてきた)この会社は、味噌も醤油もつくれなくなった。でも、かならず立ち上がるからな。町の人たちも、少しずつ戻ってくるから、そのときに、ここにいて、何でも売ろう。そうやって生きていこう」というような内容のあいさつをした、そんな場面‥‥。

・社長のいちばん大事な仕事というのは、「ちゃんと給料を払うこと」なんです。まず、瓦礫に囲まれた元工場で、それを実行している。そして、「町の人たち(お客)」に「何でも売ろう」というのは、まさしく「顧客の創造」です。味噌醤油という武器が奪われても、新しい顧客のための、新しい仕事を創ろうとしてます。最低限できることを、確実に、あの環境でやっている。

ぼくら、境遇はちがうのですが、前代未聞の大震災の後、「この社長のように考えよう」と思いました。なにがどうなるのかはわからないけれど、未来に、「この震災やら原発事故やらで、おれたちは倒れた」なんて絶対に言いたくないからね。「あいつら震災のせいで、妙に強くなりやがった」と、悪口言われるくらいの「ほぼ日」になってやります。

今日も「ほぼ日」に来てくれて、ありがとうございます。しぶとく生きて、しつこく支援。長丁場だ、健康でいよう。
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