[糸井]
そこで島尾さんの「立派の部」は終わって、今度は『死の棘』になるんですよ。
ぼくには、島尾敏雄と森繁久彌がまるで並行した動きに見えるんです。
戦争のすごさと人間のすごさと新しい時代での生き方をふたりは見事にあらわしている。
[黒柳]
うん‥‥そういうこと、あるんですね。
野坂昭如さんにしても、渥美清さんにしても、女優さんでは池内淳子さんとか、ほかにもいっぱいいらっしゃるんですけども、みんな、有名になったからって
「別に、だからどう?」というところがあります。
みんな、自分らしくは生きてきたんでしょうけど、スターだといって鼻高く歩くなんてことは微塵も持ってない人たちです。
明日になったらまた、すべてが変わるかもしれないんですからね。
教科書が塗りつぶされていた、そんな時代です。
学校の先生だって、
「昨日までああ言ってたのに!」
ということを急に変えたりしました。
それをみんな子ども時代に体験しているんです。
誰も責任をとってはくれなかった、そして自分も何だかわかんない。
そういう日々をわたしたちは過ごしていたんです。
(つづきます!)
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