[糸井]
うん、そういうこと(笑)。
[岩田]
ただ、やっぱり、ほかの誰かに「やれ」って言うよりは自分がやったほうがいいなと思ってやってます。
その判断があるから、覚悟が決まるんですよ。
[糸井]
しかも、いつの間にかスピーチは英語になっちゃったしね。
[岩田]
ええ、2001年以降はそうですね。
まぁ、カタカナ英語でキレイな発音ではないですけど、現地の人は、よくわかると言ってくださるので、とりあえずはいいかなと。
[糸井]
岩田さんが英語でスピーチするところをはじめて見たときは、友だちとしてホロリとしましたよ(笑)。
この人はそこまでやれるんだと思って。
だって、できるようになったわけでしょう?
[岩田]
幼少期にアメリカに住んでたわけじゃないですからね(笑)。
高校のときは英語苦手でしたよ。
[糸井]
だからさ、苦手とか苦手じゃないかとか、好きとか嫌いとかってことじゃなく、人生ってやっぱり決まるね。
苦手だからイヤだと言ってたんじゃ、なんにもできなくなるね。
[岩田]
だから、どうせやらなきゃいけないなら、さっさと覚悟を決めて前向きに取り組んだほうがいいじゃない、っていうことなんでしょうかね。
[糸井]
うん。でもそういうことを言うと、
「私は弱いんです。それができないんです」
っていうメールがたくさん来るんだろうな(笑)。
[岩田]
いや、でも、糸井さんも私も、してないこともいっぱいあるじゃないですか。
[糸井]
ありますね。とくにぼくは、岩田さんとくらべたらものすごくあります(笑)。
[岩田]
覚悟を決めてやってることもあるけど、してないこともいっぱいあるし、してないことは、しないですむからしてないんですよ。
で、しなきゃいけないことを、やってるんですよ。
[糸井]
あのね、その話を聞いて思い出したのはね、ぼくの子どもが高校のときのことなんだけど。
ある日、子どもが学校帰りにカラオケボックスに行ったとか行かないとかで、先生から親が呼び出しを食らったんですよ。
で、ぼくは、そういうPTA的なことはとっても苦手で、なるたけ逃げてたんだけど、そこで子どものために先生と話すというのはね、なんだか、すごくうれしかった。
[岩田]
はははははは。
[糸井]
なんていうか、
「ここはオレの出番だ!」って思えてね。
でも、イヤなんですよ、もちろん?
[岩田]
ええ、イヤですよね。
[糸井]
イヤに決まってます。ただ‥‥。
[岩田]
自分がやるしかないんですよね。
[糸井]
そう。それで、しかも、子どもは、自分のために苦手なことをすすんでやってくれる人のことを好きになるに違いないと思って。
だから、やっぱり「ありがとう」って言われたいんですよ。
[岩田]
だから覚悟が決まるわけですね。
[糸井]
そうそうそう。
[岩田]
いや、あのね、私が英語のスピーチを引き受けたのは、いまの呼び出しの話とほとんど同じです。
[糸井]
やっぱり(笑)。
[岩田]
だって、誰かがそうしたほうがいいんですよ。
私がはじめてスピーチをしたときは、まだ社長に就任していないころですから
「社長としての使命」というわけでもないんです。
誰かが、アメリカのショーで、任天堂というのはこういう考えでやっているんだということをしゃべらなければいけない。
宮本(茂)さんに練習してもらうのか?
いや、宮本さんの時間をそこに使うより、おもしろいゲームをつくってもらうべきだ。
じゃあ、自分がやろうという判断だったんです。
[糸井]
たいへんに決まってるけれども、
「自分がやったほうがいいぞ」
という判断のもとに覚悟が決まる。
その連続なんだね。
[岩田]
そうですね。
そして、重要なことは、その覚悟によって
「できなかったことができるようになる」
ということがおもしろかったということです。
たいへんだけど、同時におもしろみも見つけることができたので、いままで続けてこれたんだろうと思います。
(続きます)
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