父が、勤続30周年記念旅行で、母を連れてヨーロッパへ行くことになった時のこと。 初めての海外旅行に大張り切りの父。 行程表に美術館が入っており、 「勉強せな!」と、私の大切な美術全集の中の「印象派」の巻に、何と赤マジックでラインを引いてしまった。 絶句する私に 「お父さん、線引かんと 覚えられへんねんもん」とモジモジ言い訳。 怒った私は、 「じゃあ、覚えたどうかテストするぞ! 最初に出て来た画家の名前は?」と、クイズを出してみた。 うーんうーんと記憶を辿り、絞り出した父渾身の回答は、「ク‥‥ク‥‥クロワッサン」 膝から崩折れた私。正解はドラクロワ。 その後も、ローランサンを 「ええと‥‥サン・ローラン」など、絶妙な答えを連発し続けた父。 そして、満を持して乗り込んだヨーロッパで、美術館が臨時休館、というオチをつけて帰って来た。 今は亡き父の、超天然エピソードの中でも、いちばん脱力した思い出。
(もつ)
|