会社のビルの下の食堂街に、讃岐うどんコーナーがあり、釜揚げうどんに天ぷらや生卵のトッピングなどを頼んだりできるので、女子にはちょうど良いボリュームで気に入っていました。 その日、遅めの昼ごはんを食べにいきました。 おすすめの黒板に手書きでいくつかのメニューが書かれていて、真ん中に「釜玉うどん」とありました。 そして、その一行上の 「シラスおろしうどん」には強くおすすめしているのか、下線が引かれて強調されていました。 その下線が「釜玉うどん」の文字の一部を隠していたことに、そのとき私は気づかなかったのです。 「何にしますか?」という店員さんに向かって、私は黒板の文字を目で追いながら、こう質問したのです。 「金玉うどんって何ですか?」 ‥‥私はただ単に、 「金」というのは卵の黄色のことか? 天ぷらでも乗っていることか? というようなことを考えていただけなのです。 質問のあと、カウンター内のお兄さんやお姉さんがフリーズしているのを眺めながら、自分がいま何を口走ったのかが徐々に脳みそに入ってきたのでした。 目の前の地面に穴があったら入りたいと、比喩でなく思った一瞬でした。 「釜玉です‥‥」という店員さんの説明を聞き、そのまま注文し、この店には二度と足を踏み入れられないと考えながら黙々と食べ、早々に立ち去りました。 時間はこういったダメージも癒してくれ、いまでは女子会の自虐ネタにはできますが、いまだに同僚男性には話していません。
(墓場まで持って行く)
|