[糸井]
ほう、ほう。

[上田]
で、開業してから2〜3年の時点で、いちおう、順調にはいってたらしいんですよ。
でもね、もうちょっと、うまくいかないかな、従業員が一丸となって働けるような、そういう店にできないかな‥‥と思ってるときに、ドラッカーに出会ったんですって。
で、「自分たちの強みに気付け」って言葉に感化されちゃったらしいのね。

[糸井]
ほほう。

[上田]
従業員の「強み」に注目するようになってそれによって人材の配置を考え、成果をあげることにつなげていったんです。
従業員どうしも、お互いの強みを認め合ってそれを活かすようにしていったら、なんだ、その後の4年間で、売上が10倍とかに、なったとかで‥‥ね。

[糸井]
はー‥‥。



[上田]
ま、それだけわかりやすい成功のケースも珍しいのかもしれないけどね。

[糸井]
以前、ユニクロの柳井(正)さんに
「それ、どこで勉強したんですか」って聞いたら
「本です」っておっしゃってたんです。
いま思うと、そこにドラッカーがいたんですよね。

[上田]
はい、はい。

[糸井]
でも、それを読んだ若い時分にはよくわかってなかったって、言っていました。
でも、わかってないなりに、たとえば「顧客の創造」って言葉をひとつ憶えるだけで、地方都市で、家業の洋服屋を継いだばかりの若い経営者は、その言葉をたよりに、しばらく、頑張れたんですよね。

[上田]
ああ‥‥なるほど。

[糸井]
ドラッカーって、そういうことかもしれない。

[上田]
うん?

[糸井]
つまり、すごく魅力的じゃないですか、言葉が。
学者として、他と比べて、圧倒的に。
小説を読むような感じに近い‥‥と言いますか。

[上田]
やっぱり「作家」なんだよなぁ。



[糸井]
ああ、なるほど。

[上田]
だから、人間観察もするどいわけ。

[糸井]
うん、うん、うん。

[上田]
希望は小説家になることだったんだからね。
実際、小説も書いてるし‥‥2作。

[糸井]
あ、そうなんですか。

[上田]
うん、ぼく、訳してないけど(笑)。

[糸井]
つまり、大きな意味での
「芸術家」だったのかもしれませんね。

[上田]
うん‥‥そうかもしれない。



(親日家のドラッカーは、日本でもたびたび講演会を開いた。
テーブルにちょこんと座って話すのが、ドラッカー流。)



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