クマちゃんからの便り

色んなモノが壊れていく

朝、車が動かず<押し掛け>で無事エンジンがかかった。
エンジンすらも寝不足気味だ。
そして、こんな遠くまで来ていつまで持つやら。
インターネットも全く繋がらない地域になってきた。
Cotonueに戻るまでダメだろう。
今日、明日はゲージツに専念だと思っていたら、
ついに持参していた愛機<RICOH GR>までもが
動かなくなった。
エエイ! クソっタレメが!
こうなりゃ身体ひとつだわい。
校庭には赤土だけを固めた500個の煉瓦が並んでいた。
繋ぎにセメントは一切使わせなかったから
三ン分の一はひび割れている。
それを見たゾマホン大いに怒り、業者を叱りつける。
「マ、マ、マ、オレの指示だから」
と割ってはいるも
「ダメダメ、だからベナン人はいつまでも
 仕事に自覚が無いんだ」
「これだけでも何とか出来るから、許してやれよ」
「いつもこんないい加減な態度で仕事してるんだな、
 手前ェ等は」
ゾマホンは黒いヤクザになっていた。
「これから遣り直しますから」
業者はすっかり小さくなった。
「KUMAサマのゲージツの邪魔をするんじゃないぞ!」
「ゾマホン、そんなに怒らんでも」
「ダメです。ゼニだけ欲しがるだけでは
 イイ国になりませんから。
 彼等の為にもなりません」
ゾマホンは愛国者なのだ。
ニッポンだってほとんどがゼニ問題じゃないか。

オレはマンゴーの樹の下に、
持参したロープをコンパスにして地面に渦巻きを描く。
ゾマホンは長い棒を振り回し叫びながら、
オレの作業の邪魔になる子ども等を追いはらう。
オレはその間に地面に絵を描く。
何とオレの足許にSABIがいた。
「SABI、手伝うんだ。そこの煉瓦を運んでこいよ」
SABIが自分ほど大きな煉瓦を抱えてきた。
SABIが笑顔を見せた。
『ヨシッ、そうだ、笑うのも生きる力なんだぞ。
 悲しいことがあったら身体を動かすんだ』
オレは彼の頭に手を当てて願った。
ハエのようにまた寄ってくる子ども等を
ゾマホンがまた追う。
赤ん坊を背負った小さな子どももみんな必死に逃げ惑う。
ゾマホンはBENINの<ナマハゲ>になった。
校庭の隅を近所のオッカサンやオッサンの行列の土ぼこり。
「ゾマホン、大量の援軍が来たぞ」
「いや、あれはイースターのお祭りです。
 こっちの祈りの方が今は大切なんだよ」
彼の目は真剣だった。
「ゾマホン、あの子ども等にも働いてもらうぞ」
「分かりました」
校庭では高学年がボールに入れた赤土を
頭に載せて運んで来る。
水くみポンプから水を頭に載せたグループがやって来る。
逃げ惑ってた子ども等も煉瓦をはこぶ。
オレの[水]のテーマの土の彫刻の始まりだ。
欠けた煉瓦を並べ捏ねた赤土で繋げていく。

ジッとオレの作業を見つめていた子ども等のなかから、
オレの作業の先を読む子どもが現れた。
彼はリーダーとなって他の子等に指示しはじめる。
子ども棟梁だ。
何処の遠征地にも必ず居た
<予知する子ども>が現れるのを信じていた。
BENINにもやっぱりいた。
持ち出した椅子に腰掛け、
泥遊びをはじめたこの黄色い大人は
ちょっと様子が変なヤツだぞってな目で見ている大人等。
彼等には目先の見える物しか頭蓋に見えないのだ。
子ども等は物凄い勢いになってきた。
イイ感じである。
オレは煉瓦を二段目に積みげていた。
マンゴーの樹に変身して天に昇る
水の神サマ<龍神>が地面から起ち上がったのだ。

ゾマホンが飛んできて
「村の大人たちがやっとKUMAさんのやることが
 見えてきて大喜びしたり、たまげたりしています」
と言う。
「こんなカタチが思いつかなかった」
「こんな家がほしい」
という先生や大人達。ゾマホンまで大喜びだ。
「だろう。オレはこうなることは知っていたよ。
 でもよかったな」
「ありがとうございます。おめでとう」
「いやいやまだ始まったばかりさ」
次々に大人等がオレに礼を言いに来た。

みんな夢中で泥遊び。
三段目、赤土の壁の自重を支えるために
テーパーを付け根元を分厚くしていくと、
長老といってもオレよりは若そうな職人さんが現れた。
「ここはオレに任せろ」
彼は子ども等が運ぶ練った赤土をちぎっては投げ
投げてはちぎり。さすがに手がえしがイイ。
何だってそうだが、
手首が硬くなったら生きてることさえが半減する。
彼等は大人も子どもも一緒になってこんな大掛かりな
<泥んこ遊び>はしたことないだろう。
泥だらけになった彼等の顔が誇らしい。

真っ暗になってきた。
暗闇に子ども等がうごめいている。
オレにはもう見えない。
校庭の地面からドラゴンの背びれが起ち上がっていた。
今日も火を焚いて作業をすすめようと思ったけど、
思い切って
「よしここまでだ。仕上げは明日にするぞ」
仕舞いにしたのだ。
実質ここまで三時間だ。早い。
重機を持ったノルマ主義の土木業者でもこうはいくまい。

クマさんへの激励や感想などを、
メールの表題に「クマさんへ」と書いて
postman@1101.comに送ろう。

2010-04-11-SUN
KUMA
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