クマちゃんからの便り

11月3日のブログより

地図を頼りにお茶の水。
小川町近辺の裏通り。
街灯の灯溜まりで暗い気配を放つタバコの集団。
確かにすでに夕刻のビル一階は
ドキュメント専門に上映する
三〇席ほどのスポットらしい。

すでに何人か座って上の空の雑談男等は、
ドキュメント好きの常連なのか入ってくる客を
ジロジロと品定めするように眺めまわす。
オタク系の鬱陶しい異空間があるのがシチーである。

サクラメントで生まれ
第二次大戦のときツールレイク強制収容所送り、
敗戦で原爆のヒロシマに送られて、
再度渡米してNYの路上で絵描き生活を続ける
日系人ミリキタニの物語だ。

東京映画祭のドキュメンタリー部門で
グランプリを取ったこの映画のプロデューサーは、
NYでやったオレの個展で知り合った
カメラマンのMASAだ。

ホドコシや社会福祉の支給を受け取らず、
段ボールに描く絵とゼニと交換して生きるミリキタニは
今年八十四歳。
<9・11>の日、
騒然とした瓦礫の路上の灰を浴びながら、
平然と絵を描き続けていた。
テロリスト探しでヒステリックになる
アメリカを罵倒する彼には、
故郷HIROSHIMAがあったのだろう。

拡散しつつある核のジダイ、
魔都TOKYOの片隅で、
<明日消滅を迎えるとしてもリンゴの苗を植え続ける>
男の生態を観た。

ミリキタニは誇り高い現代アーティストである。




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2006-11-07-TUE
KUMA
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