小林秀雄のあはれといふこと

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。

其の五拾五・・・・人間ドック


「なあ、北小岩。近頃健康診断受けとるか?」

「わたくし、学校を卒業して以来
 そのようなものは受けたことがございません」

「実は俺もなんや。
 病気は早期発見が勝負だからな。
 たまには診てもらおうかい」

特にどこが悪いというわけではないのだが、
小林先生は電信柱に
「人間ドック一人1000円ポッキリ!」
という張り紙を見つけた。
破格なことだし、
弟子の北小岩くんを連れて行ってみることにした。

「まず、この鼻をつけてください」

医者はそういうと、
唐突に黒いつけ鼻を差し出した。
わけがわからず装着すると、
いきなりにぎりっ屁をかまされた。
北小岩 「くっ、臭すぎるでございます!」
医者 「それは犬の鼻と同じ嗅力のあるつけ鼻だ。
 犬の鼻は人間の100万倍の匂いを嗅げる。
 その鼻で屁をダイレクトに吸ったのだから、
 失神間違いないな。
 はははははは」
二人はそのまま意識を失った。
気がつくと全裸にされ、
おしりの穴にしっぽを埋め込まれていた。
頭にはとがった耳がつけられている。
その上首輪まで。
小林 「なぜ人間ドックなのに、
 こんな犬のようなカッコをさせるんや!」
医者 「何を勘違いしている。
 ここは人間ドックなんかじゃないぞ。
 聞いておどろくなよ、
 ここは世界にひとつしかない
 『人間ドッグ』なのだ!」
小林 「なんと!
 それじゃあ俺たちは、
 犬にされてしまうんか?」
医者 「まあ、そんなところだ。
 じゃあまた後でな」
そういうと医者はどこかに行ってしまった。
何とかしなければと思い、
引っ張ったり床にこすりつけたりしているうちに
鎖が外れた。
裏口を目指しダッシュを駆けると、
紺色の帽子を被って
警棒をくわえた狂暴そうなシェパードが
前方に踊り出た。
小林 「あれは何や!」
北小岩 「あれこそは
 『犬のおまわりさん』ではありませんか!」
小林 「そんなヤツがほんとにおったんか!
 やばい、こっちくるで!
 かっ、噛まれる!!」
シェパードが先生に飛びかかろうとした瞬間、
後ろから間抜けな歌声が聴こえた。

♪〜いぬの おまわりさん 
 オナってしまって
 アンアン アアン アンアン アアン

音もなく現れた医者の歌を聴くと、
シェパードはバツの悪そうな顔をして
あっちへ行ってしまった。
医者 「危ないところでしたね。
 あの犬が一人でいるとき
 何をしているのか私はよ〜く知っています。
 でも、あなたたちのいうことは聞きませんよ。
 それがわかったら、
 金輪際逃げようなどと思わないことですね」
二人は観念した。
医者 「それではまず四股を百回踏むこと。
 それがすんだら、
 片足をあげたままの姿勢で1分間。
 それを10セット!」
何でそんなことをしなければならないのかと思ったが、
犬のおまわりさんを放たれると大変なので
素直にしたがった。
あまりの辛さに卒倒しそうになったが、
時間をかけて何とかやりとげた。
医者 「ではトイレに行ってください」
ドアを開けるとそこに便器はなく、
電信柱が二本立っていた。
医者 「片足を大きくあげてオシッコをしなさい」
ドアの向こうでは
犬のおまわりさんがこちらを睨んでいる。
小林 「仕方ないな」
二人は片足を大きく上げて
電信柱にオシッコをかけた。
だが四股を千回も踏まされていたので足がしびれ、
オシッコをしながら倒れてしまった。
カラダはオシッコびたしだ。

北小岩 「せっ、先生!」
小林 「たえるんや、北小岩!」
なんとかオシッコをし終えると、
ミニスカートの色っぽい看護婦さんが二人を呼んだ。
看護婦 「次はちんちんの時間で〜す!
 こちらに来てください〜い!」
小林 「聞いたか、北小岩。これはアメとムチやな」
二人は気持ちのいいことをしてもらえると思い、
ケツの穴に装着されたしっぽを
千切れんばかりに振りながら
隣の部屋に入っていった。
二人とも前がふくらみかけている。
看護婦 「あんたたち、バカじゃないの!」
竹の棒でしこたま前を打たれた。
ちんちんというのは
いい気持ちのすることではなく、
ふるちんのまま両手を前にして、
爪先立ちでぴょんぴょんさせられることだったのだ。
医者 「あなた方はよく人間ドッグに耐えました。
 見事な精神力です。
 では最後の試練にいきます」
二人は引き綱につながれると外に出された。
医者 「人前でフンができなければ立派な犬とはいえません。
 人目を気にせずここでフンをひりだせたら
 人間ドッグ終了です」
もう従うしかない。
幸運なことに道には誰もいない。
二人はしゃがみこんで踏ん張った。
力むとしっぽがお尻から飛び出し、
フンがこんにちはをした。
その時医者が大声を出した。
医者 「火事だ!誰か助けてくれ〜〜〜!」

そう叫ぶと医者は
建物の中に入ってカギをしめてしまった。
家の窓がいっせいに開いて二人を凝視した。
二人はしゃがみこんだまま逃げようとしたが、
先生は北小岩くんの糞を踏んでひっくり返ってしまった。
北小岩くんは泣きながら先生のもとに駆け寄ってくる。
そして、世界一みじめな人間ドッグは終わった。
翌日、人間ドッグ料金二千円の請求書が書留で届いた。

2001-06-21-THU

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