小林秀雄、あはれといふこと。

その参拾・・・英語

「I have two golden balls.」

「I looked her pubic hair.」

縁側で弟子の北小岩くんが、英会話を練習している。
ボーダーレスの時代を迎え、弟子も机上の学問だけでなく、
どんどん海外にでて修行をつむ必要があるのだ。

先生 「ほう、英語の勉強か。毎日、語彙を増やしていかな
   あかんで。日本人は英単語を知らなさすぎる。
   まあ、俺も人のことは言えんがな。
   例えば、おならという重要な単語ですらわからへん。
   北小岩、ちょっと調べてくれや」。

弟子 「はい。え〜と、おならおなら・・・。
   先生、windと書いてあります」。

先生 「なに!!!」

弟子 「どうしたのですか。おならも匂いつきの
   風みたいなものですから、そんなに不思議では
   ない気がしますが」。

先生 「あほ、そんなことをいうとるんやない。
   俺に多大なる影響をあたえた
   ボブ・ディランはんの名曲を
   思い出してみい」。

弟子 「Blowin' in the wind・・・。はっ!」

先生 「そうや! 日本ではみんなこの歌を
   『風に吹かれて』として歌っていたが、
   ディランはんは
   『屁に吹かれて』という意味で
   歌っていたのかもしれへんで」。

弟子 「なるほど。そうに違いありません!」

5 屁に吹かれて

先生 「うむ。前々から英語は一つの語で
   いろいろな意味を表わしすぎていて、
   一歩間違うと大惨事を
   引き起しかねないと思っていた。
   俺の人生を変えたあの歌のタイトルが、
   『屁に吹かれて』だったとは・・・。
   『友よ、その答えは屁の中にただよっている』。
   もしその正しい訳で広まっていたら、
   この歌はどの程度の力を持ったのだろうか。
   う〜ん。北小岩、いちおうstoneもひいてくれ」。

弟子 「stoneには石という他に、砥石や墓石
   という意味もあります」。

先生 「『Like a rolling stone・・・。
   俺は『転がる砥石』のように
   生きようと思ったわけか。
   かっちょ悪いわ。くそ。大便はなんや!!」

弟子 「fecesとか、stoolとか」。

先生 「あまり簡潔な表現とはいえんな。
   大便など『ビッグ・ベン』でええやないか。
   琵琶を弾きながら歌うとええ感じやで。
   ベベンベンベン ビッグ・ベン〜」。

5 ビッグ・ベン

弟子 「やけ糞ですね。そういえば、先生は以前
   イギリスのビッグ・ベンのそばで、
   犬の糞を踏んだと言っていたではないですか」。

先生 「そうやった。あれは俺が
   今までに踏んだ糞の中でも、
   一、二を争うデカさやった。
   踏んだ瞬間、ビッグ・ベンここにあり! 
   と思ったもんや。
   大英帝国の底力をまざまざと見せつけられたわ」。

弟子 「下呂温泉に向かう列車の中で、後ろの人が
   ゲロを吐いていたこともありましたね」。

先生 「そうやな。どういうわけか俺にはそのまんまやんけ
   という出来事がよく起こるわ。
   困ったもんやエロエロ」。

弟子 「何ですか、そのエロエロというのは」。

先生 「結詞や。
   そんなことより、エロ本は英語で何というんや」。

弟子 「エロ本、エロ本と・・・。ありました。
   an obscene bookです」。

先生 「それじゃあエロ本の勢いが表現されてへんな」。

弟子 「『ERO BOMB』なんていう
   言い方はどうでしょうか」。

先生 「ほう、エロ爆弾か。上物のエロ本にはええ表現や。
   なかなかセンスがよくなったのう。
   一冊で何回も昇天させるような超特上のエロ本には
   『ERO BOMBER(エロ爆撃機)』の
   称号があたえられる」。

弟子 「カッコいいですね」。

先生 「うむ」。

こんな調子で夜更けまで『肛門』だとか『膣』だとかを
調べ続けた二人であった。
日本がいかに国際化の時代を迎えていようとも、
この二人だけは金輪際海外に出さない方がよさそうである。

1999-06-10-THU

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