KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の九百八拾八・・・道場破り

「たのもう!」

小林 「町境の向こうから
 変なヤツが叫んどるな」

「たのもう! たのもう!!」

北小岩 「しつこいでございますね」
小林 「道着を着とるな」

「たのもう! たのもう!! たのもう!!!」

小林 「何をたのむのか
 聞いてみい」
北小岩 「はい。
 あなたさまは何を
 たのむのでございますか」

「あんた方の町は
 『まわし相撲』でナンバーワンだな」

小林 「そやな」

「だもんだから
 おいらが町で一番の男と闘って
 一番になるんだ」

小林 「なるほどな。
 言うなれば道場破りやな。
 だがまず名を名乗るのが
 礼儀やろ」

「失礼した。
 おいらは
 『玉大木井度!(たまおおきいど!)』と
 申すもんです」

小林 「町には玉自慢が
 ぎょうさんおる。
 吠え面こくなよ。
 北小岩、
 町はずれの祠に行って
 誰に征伐させるか
 長老に聞いてこいや」
北小岩 「かしこまりました」

弟子は全力疾走で祠に到着すると
長老のこ汚い字で
町の代表選手が書かれた紙を携え
再び戻ってきた。

政治家が元号を発表する時のように
紙を広げると読み上げた。

北小岩 「『そんなもんは
  小林の玉でいいじゃろ』」

先生の顔が見る見る青ざめていく。

小林 「俺はまったく強くないし
 強靱でもない・・・」

『まわし相撲』とはこの世の闘いでも
最果てといってよいほどの過酷なものである。

日時は本日の
19時19分(いくいく)が指定された。
決戦の刻が近づくと
町の公園に大勢の男たちが詰めかけた。

先生と玉大木氏はまわしを締めている。
二人の勇者が向き合う。

行司 「はっけよい!
 つぶれた!!」

不穏な始まりである。
マン力という工具で
まわしを極限まで締め上げる。
すると金玉があっぱくされて
まわしからはみ出してくるのである。
通常の大会では優勝者は、
はみ出し横綱と呼ばれる。

ギリギリギリ

北小岩 「両者の玉金が
 まわしの隙間から
 こんにちはをしてまいりました」

今年度
優勝者
「町代表なんだから
 玉を失っても負けんなよ!」

ギリギリギリギリギリ

行司 「つぶれた!
 つぶれた!!」

マン力がさらに締め上げる。

北小岩 「あっ!
 先生の玉金が
 紫色になっております!」

ギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリ

小林 「うげ〜〜〜!」


先生が失神すると同時に
玉大木氏も悶絶した。

行司がミクロンまではかれる電子定規で
どちらの金玉がよりはみ出しているかを
計測した。

行司 「勝負あり!
 玉大木の勝ち!!

「ああ〜」

会場から絶望の玉息、
もとい、ため息がこぼれた。

小林秀雄さんへの激励や感想などは、
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2023-09-10-SUN

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