KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の八百九拾六・・・便さん

とんとん

北小岩 「入ってますか?」

「何だよ!」

北小岩 「違いました。
 申し訳ございません」

とんとん

北小岩 「入ってますか?」

「おい! 落ち着かねえだろ」

北小岩 「ここも違いました。
 申し訳ございません」

じゅわっ

弟子の目に涙が光る。

小林 「お前、
 便所で人に迷惑をかけたうえ、
 なぜ泣いとるんや。
 変態が極まったか」
北小岩 「あっ、先生。
 そうではございません。
 あの方が・・・」
小林 「便さんのことやな」
北小岩 「そうでございます」

便さんとはいったいどんな人物であろう。
その一コマを見てみよう。

ニコニコニコ

便さんは一度も怒ったことがない。
常に凪のような男だ。
そして。

便さん 「北小岩さん、
 ご一緒お願いできますか?」

北小岩 「ぜひよろしくお願いいたします!」

ぱたんぱたん

便さん 「ではまいりましょうか!」
北小岩 「はい!」

ぶり

ぶり

便さん 「幸せですか〜」
北小岩 「幸せですよ〜」

便さんのチャームポイントは、
連れしょんならぬ連れ便なのである。
便さんの隣の小部屋で同時に出すと、
不思議なことに誰もが至福を味わえるのだ。

町の男たちはみな便さんとのひと時を
楽しみにしているため、
数年に一度しか順番が回ってこない。

小林 「俺も便さんと出した便が、
 マイフェイバリット便(べん)やな」

北小岩 「わたくしもでございます。
 しかし、このところ
 便さんを見かけなくなっております。
 どうしたのでしょうか。
 とても心配で町のトイレを
 まわっていたのでございます」
小林 「残念ながら便さんは
 もう町にはおらん」
北小岩 「どういうことでしょうか」
小林 「新たな世界を求めて
 森に入った」
北小岩 「えっ?」
小林 「これからは森の動物たち、
 鹿や猪や野兎などと
 自然の中で
 連れ便することにしたんやな」
北小岩 「そうなのでございますか・・・。
 穏やかな方でございますから、
 森の動物たちと
 穏便にやっていかれるのですね」

森へと旅立った愛すべき男、便さん。

ところであなたのマイフェイバリット便(べん)は
どの便ですか?

小林秀雄さんへの激励や感想などは、
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2021-12-05-SUN

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