KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の七百八拾七・・・隣町の動物園

北小岩 「先生、
 世を渡っていく上で
 重要なことは何でしょうか」
小林 「間隔やな」
北小岩 「間隔でございますか。
 哲学的ですね!
 わたくしのようなものには、
 何を意味するのかわかりません」
小林 「間隔をあけることや。
 町のある男がそれに気づき、
 生き方を変えたんや」
北小岩 「凄いでございます」
小林 「今から
 奴と会う約束をしとるから
 来てみるか」
北小岩 「はい」

満面の笑みで弟子が先生の後をついていくと。

北小岩 「むこうからいらっしゃるのは、
 町で一番屁が臭いといわれている
 『屁腐礼放(へぐされはなつ)』
 さんではございませんか!」

北小岩くんは屁腐礼氏の腐った屁を
肺の奥まで吸い込んでしまったことがあるため、
震えながら鼻をつまんで顔を伏せた。

小林 「そんなことせんでも
 大丈夫や。
 奴は間隔を会得したからな」

挨拶もそこそこに
屁腐礼氏の後をついて
エスカレーターに乗った。

小林 「ここから先は、
 奴の前に出んとあかん」
北小岩 「どういうことでしょうか。
 それに間隔で
 世を渡るということも」
小林 「ともかく
 前に出なあかん!」

師弟が屁腐氏の前の段に移ったその刹那。

ぶほっ〜〜〜!!!

北小岩 「屁腐礼さんが
 屁をこかれました!
 あっ、はるか下に
 後からエスカレーターに
 乗ってくる人がおります。
 わたくしたちは
 エレベーターの
 てっぺんに着きました。
 ということは」
小林 「そやな。
 屁腐礼の滞空時間の
 長い腐った屁を
 後から来る奴らは
 肺の奥まで吸い込むことになる。
 だが、屁腐礼は
 もうおらんわけやから、
 誰の屁かわからんと
 いうこっちゃ」

北小岩 「つまり
 後から来る人との
 間隔があいているから、
 今までは
 屁腐礼さんの屁とわかって
 責められていたものが、
 責められずに穏便に
 事が運ぶということで
 ございますね」
小林 「間隔によって
 世を渡ることが
 できるようになったと
 いうこっちゃ」

三人はその後、エレベーターに向かった。

北小岩 「わたくしたちしか
 おりません」

びゅ〜ん

ぴたっ

小林 「この上の階で
 待っとるヤツがおる。
 北小岩、すぐ降りるぞ」

先生と弟子は、
弾丸のようにエレベーターから飛び出した。

ぶほっ〜〜〜!!!

屁腐礼氏が外に出ると、
毒ガスの箱が上がっていった。

これから屁を嗅いで卒倒する者たちには、
誰の屁を吸い込んだのかはわからない。
これもまた、氏が間隔を身につけたおかげだ。
それにしても、
先生は彼と会って
何をしようとしていたのだろうか。
 

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2019-11-03-SUN

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