がたっ
「はいよ」
ばさっ
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| 小林 |
「なんや？」
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| 北小岩 |
「回覧板でございます」
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| 小林 |
「誰からや？」
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| 北小岩 |
「町内会ではないでしょうか。
んっ？」
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| 小林 |
「どした？」
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| 北小岩 |
「町内会ではないようです」
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| 小林 |
「そうか」
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| 北小岩 |
「大金持ちで有名な
『金多馬田（きんたまだ）』様
からの回覧板のようです」
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| 小林 |
「どういうこっちゃ」
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| 北小岩 |
「『銀行口座を
お持ちの方は、
楽しみにお待ちください』」
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| 小林 |
「ほほう」
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| 北小岩 |
「『口座をお持ちでない方は、
すぐにお作り下さい』
とのことです」
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| 小林 |
「なるほどな」
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| 北小岩 |
「どういうことでしょう」
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| 小林 |
「金多馬田は金は持っとるが、
下の金がもうダメらしいんや。
ヤツはこれといった趣味もなく、
金が貯まる一方やから、
町のヤツらに還元しようと
思ったんやろな」
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| 北小岩 |
「なるほど。
しかし、わたくしたち
通帳を持っておりません」
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| 小林 |
「お前所持金はいくらや」
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| 北小岩 |
「２円でございます」
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| 小林 |
「俺も２円持っとる。
二人で４円もあれば十分やろ」
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師弟は２円ずつ握りしめ銀行へ。
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| 小林 |
「通帳は
いくらあれば作れるんや」
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銀行の
女性 |
「１円からでございます」
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| 小林 |
「俺たちは各自10億ずつ
持っとるが、
今日のところは１円ずつで作ったるわ」
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そのようにして手帳を手に入れた。
そして、大金持ちから入金される日がやってきた。
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| 小林 |
「これでもう俺たちも
汗水たらして
働かなくてすむな」
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師弟がまともに働いているところなど、
見たことないのであるが。
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| 北小岩 |
「どれぐらい巨額のお金が
入っているか楽しみですね」
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二人は銀行員にやり方を教えてもらい記帳した。
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| 小林 |
「数千万入っているかもな」
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| 北小岩 |
「そうでございますね！」
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| 小林 |
「むっ！
お前はどや！」
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| 北小岩 |
「はい。むむっ！
お金の替わりに『屁』が
振り込まれております！」
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通帳にでかでかと
『屁』と印字されているのだ。
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| 小林 |
「俺もや！」
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| 北小岩 |
「まさか」
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二人は『屁』の文字に鼻を近づけてみた。
プ〜
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| 小林 |
「臭せえ！」
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| 北小岩 |
「臭いでございます！」
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大金持ちは有り余るお金を
町の人々に分配するのではなく、
このしょうもないシステムを構築するために
注ぎ込んだらしい。
先生の町は、大金持ちまでくだらない。 |
