KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の六百弐拾九・・・塚

小林 「10月も半ばを過ぎたな」
北小岩 「そうでございますね」
小林 「彼岸も1カ月ほど過ぎたな」
北小岩 「早いものでございますね」
小林 「俺たちの町では、
 彼岸過ぎのこの時期、
 重要なことがあるのを知っとるか」
北小岩 「存じません」
小林 「実は俺も
 長いこと忘れとったが、
 急に思い出してな」
北小岩 「幸いにございます」
小林 「子どもの頃よく聞かされたんや」
北小岩 「どのようなものでしょうか」
小林 「町の奥襞に塚があってな」
北小岩 「はい」
小林 「今の時期は
 『ひがん』ではなく
 『こうがん』と呼ばれ、
 塚参りをするのが
 ならわしやったんや」
北小岩 「それは参らねばなりませんね」

二人は町の険しい秘所に向った。

北小岩 「まだでございますか」
小林 「道がだいぶ
 陰唇になってきたから、
 もうすぐやな」


わけのわからないことをのたまう。

北小岩 「あっ、見えました」
小林 「ちんちん型をしとるな。
 間違いない」
北小岩 「どのような方々の
 塚なのですか」
小林 「スケベ塚といってな、
 スケベを極めた方々がおるんや」
北小岩 「敬服いたします。
 して、その方々は」
小林 「例えば、おなごが誰からも
 見られているはずのない原っぱで
 全裸になっている。
 そのカラダを遠方から眺めて
 楽しむために、
 極限まで視力を鍛えた男がおった。
 測ったことはないが、
 視力12.0ぐらいあったのでは
 という噂や」
北小岩 「おなご衆も油断できませんね。
 常に障子に目ありの状態で
 ございますね」
小林 「ずいぶんええ思いをしたらしい。
 だがな、意中のおなごが
 数キロ先で男と
 乳くりあってるところを
 見てしまったんや」
北小岩 「それは辛すぎます!」
小林 「ショックで
 視力がどんどん落ち、
 しまいに近視に
 なってしまったらしい」
北小岩 「そうでございますか・・・」
小林 「鼻を鍛えた方もおった。
 おなごが遠くでした
 小水の匂いを感じ取り、
 日によって
 濃かったり薄かったりの
 『町のおなご小水記録』を
 密かにつけとったんやな」
北小岩 「なるほど」
小林 「氏にも意中のおなごがおってな。
 彼女の小水が
 濃い日が続いとったので、
 心配になって
 近頃小水が
 濃いですよと忠告したら
 思いっきり鼻を殴られ、
 それから鼻が
 きかなくなってしまった
 という話や」
北小岩 「・・・」


スケベ塚に眠る方々は、どこか悲しい。
彼らは男が持つそこはかとない
もの悲しさを体現しているのかもしれない。

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2016-10-23-SUN

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