KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の伍百伍拾壱・・・すっぽん

北小岩 「先生の憧れの方は、
 まだ泳いでらっしゃるのですか」
小林 「そやろな」
北小岩 「可憐なマーメイドで
 いらっしゃいますね」
小林 「間違いないわな」

先生が憧れている可憐なマーメイドとは、
いったい誰のことであろうか。
それは謙虚で優しく美しい。
そしてカエル泳ぎが得意な女性。

北小岩 「週に何度もプールに
 通っていらっしゃいましたよね」
小林 「俺たちも通ったな」
北小岩 「あの時、下手を打たなければ」

先生と弟子は水とたわむれる女性を
一目見るために、何度もプールを訪れたのだ。
訪れたといっても、先生の所持金が2円。
弟子の所持金が2円。
中に入ることはできず、
2階部分の窓によじ登り、
目をハートにして眺めていたのである。

しかし、二人とも
身を乗り出し過ぎたために室内に落ち、
先生は1コースの飛び込み台の角に、
弟子は2コースのスタート台の角に、
玉をしこたまぶつけてのびてしまったのだ。

ドクターが呼ばれ
ズボンとパンツを同時におろされ、
そのままのかっこうで二人は担架で運ばれた。
結局のぞきをしていて落ちたも
同然なわけなので、そこにいた女性たちからは
汚らわしいもののように見られたのであるが、
そんな時でさえ憧れの人はただ一人、
心配そうな顔をしてくれた。

小林 「俺たちは出禁になったんやな。
 もともとプールに入る資金が
 ないんやから、出禁にしなくとも
 同じやと思うんやが」


「きゃ〜っ!」

小林 「今の悲鳴聞いたか」
北小岩 「はい」
小林 「俺が恋焦がれている人の声や。
 急ぐんや!」

師弟は全力で駆けつけ。

小林 「どうされましたか!」
憧れ
の人
「スリがバッグをとろうとして」
小林 「何! 許せん!!」
憧れ
の人
「ペットのすっぽんのぽんちゃんが」
小林 「ともかくここでお待ちください!」

先生は額に青筋を立て、スリを追った。
数百メートル先を走っていたスリは。

スリ 「いてててっ!
 すろうとしたら、
 突然バッグからすっぽんが顔を出し、
 俺の指に噛みつきやがった!
 あまりの痛さに尿意が」

スリは指をすっぽんに噛まれたまま
小便しようとした。
すっぽんはイチモツを見ると、
カメ目のライバルに
テリトリーを侵犯されたと思い、
指を離れありったけの力で噛みついた。

スリ 「うぎぇ〜〜〜!」
小林 「おいスリ!
 んっ?」

スリに追いついた先生であったが、
なぜこの男がイチモツを咥えられて
のたうち回っているのか理解できなかった。

ともかくすっぽんのぽんちゃんが
先生の憧れの人を守り、成敗したのである。
めでたしめでたし。

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2015-04-26-SUN

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