KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の四百伍拾弐・・・ストリートミュージシャン

北小岩 「もう6月でございますか。
 たまには繁華街に
 行ってみましょう」

別に6月と繁華街は何も関係ないのだが、
ともかく先を急ぐ弟子であった。

ジャカジャカジャ〜ン!

北小岩 「ストリートミュージシャンの
 方々でございますね」

♪俺の夢は〜

北小岩 「カッコいいです〜」

♪俺が己で踏みにじった

北小岩 「なるほど!」

♪誰のせいにもできないさ〜

パチパチパチパチ!

北小岩 「ブラボーでございます!」
ストリー
トミュー
ジシャン
「ありがとう!
 喜んでもらえてうれしいな。
 ところで君も歌ってみないか」
北小岩 「おたわむれを!
 わたくしなぞとてもとても」
ストリー
トミュー
ジシャン
「時には自分を
 解放してみるのもいいよ。
 俺たちはトリオで
 活動しているんだけど、
 今日はひとり
 来られなかったんだよ。
 君はもう俺たちの仲間さ」
北小岩 「むっ!」

弟子がむっ! とうなったのも、むべなるかな。
ストリートミュージシャンAとBは
スキンヘッドにしているのだが、
Aの頭には「ち」の文字が、
Bの頭には「ん」の文字が書かれている。

北小岩 「わたくし、
 髪を剃るつもりは毛頭」

言い終らないうちにバリカンで刈られた。
当然頭には、「ぽ」の文字が大書された。

ストリー
トミュー
ジシャン
「じゃあ、いってみようか。
 俺たちがギターを弾くから
 アドリブで歌ってくれ」

北小岩 「わかりました。
 わたくしも
 男の端くれでございます。
 わたくし、昔から女護が島に
 憧れを抱いておりました。
 そこにひとりで
 流れ着いた男の歌を、
 熱唱させていただきます」
ストリー
トミュー
ジシャン
「いいんじゃねえか。
 いくぜ」
北小岩 「♪〜嵐の夜に
  たどり着いたのさ〜」

♪ジャ〜ン!(ギターの男)

北小岩 「♪〜ここは女護が島
  男はわたくしだけ〜
  一人で女三千人
  ここは女護が島
  黄色い太陽です〜」

♪ジャカジャカジャカジャカ

北小岩 「♪〜はいはい
  整理券をお取りください
  わたくしは一日一回が限度
  だけど島のみなさまに
  ご満足いただけるように
  たちあがる次第です〜」
ストリー
トミュー
ジシャン
「なかなか魂が
 こもってたんじゃないかな」
北小岩 「ありがとうございます!」
ストリー
トミュー
ジシャン
「いい歌を聴かせたんだから、
 オーディエンスから投げ銭を
 いただかないとな」
ストリー
トミュー
ジシャン
「そこの缶を使いなよ」
北小岩 「そうでございますか。
 胸の前に持っていれば
 いいのですね」
ストリー
トミュー
ジシャン
「それじゃあ、
 お金は集まらないよ」
ストリー
トミュー
ジシャン
「パンツを下げて、
 そのひもで
 ちんちんにぶら下げるんだよ。
 そうするとオーディエンスが
 小銭をちんちんに当てて
 缶に落とせるだろ」
ストリー
トミュー
ジシャン
「みんな面白がって、
 結構貯まるんだよ」

北小岩くんのちんちん下には、缶が設置された。
果たしていくら貯まるのか、というよりも、
こんなことをやっている段階で、
こいつらに魂がどうのこうのと語る資格は
ないであろう。

小林秀雄さんへの激励や感想などは、
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2013-06-02-SUN

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