KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の四百弐拾九・・・ポンプ

小林 「ちん、ちん」
北小岩 「ぽっ、ぽっ」
小林 「おっ、おっ」
北小岩 「ぱい、ぱい」
小林 「ふう〜。だいぶ走ったな」
北小岩 「そうでございますね」
小林 「1、2、3、4、
 なんて掛け声より、
 すがすがしいやろ」
北小岩 「確かに。さすが先生でございます」

二人はなぜジョギングしているのだろう。
それは。

小林 「俺たちの町に、
 かなりの数の痴漢が
 出没しているらしい」
北小岩 「町の女性は、
 私たちが守らねばなりません」
小林 「痴漢は足の速い奴も多い。
 俺たちも鍛えとかんと、
 とっ捕まえることができんからな」
北小岩 「痴漢を捕まえて、
 被害者の女性がわたくしたちに
 好意を持つなどということが
 ございましたら」
小林 「望むところやな」

なんという志の低き者たちだろう。
理由がどうであれ、
痴漢を捕らえることができれば、
役立ったともいえるが。

女性 「きゃ〜!
 痴漢!!」
北小岩 「お嬢さん、痴漢はどこですか」
女性 「あの角を曲がっていきました」
小林 「ご安心ください。
 私たちがとっ捕まえて参ります」

ダダッ

師弟は全力疾走。角を曲がった。

ガッ

小林&
北小岩
「わ〜!」

ドタッ

潜んでいた痴漢が足をかけた。
手には木刀を握っている。

痴漢 「俺に何か用か」
小林 「お前痴漢やろ!」
痴漢 「うるせえ!」

木刀を振り上げた。
小林 「しまった!
 鍛えたのは走力だけで、
 武術までは手がまわらんかった」
女性 「助けて!
 ポンプマン!!」

ドドドドドドドド

プシュッ
痴漢 「う!」

ポンプマン、それは・・・。
お世辞にもカッコいいとはいえない
不細工なおっさん。

30年営んできた自転車屋を昨年廃業している。
しかし、侮るなかれ。
彼の動きは信じられないほど
素早く、自転車用空気入れの針を金玉に刺し、
瞬時に膨らませてしまうのだ。

シュッシュッシュッシュッシュッシュッシュッ

パーン!

痴漢 「きっ、金玉が破裂した!
 助けてくれ〜!!」

ポンプ
マン
「俺はパンクの修理は得意だが、
 ただで助けてもらえると思うなよ」
痴漢 「わかりました。
有り金全部、持っていってください」

真っ青な顔で、財布を渡した。

ポンプマンは穴に空気漏れ防止シールを貼り、
痴漢の金玉は転がり出ずにすんだ。

 
ポンプマン・・・。
様々な問題はある気もするが、
正義の味方であることは間違いない。

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2012-12-23-SUN

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