KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の四百弐拾・・・回転

冷え〜

「先週、秋とはいえ
 かなり冷え込んできたと思いました。
 しかし、今週さらに冷えが増してまいりました」

冷えびえ〜

「今、どれぐらい冷えているかと申しますと、
 冷やし中華より激しいと言わざるを得ません」

意味不明なことをのたまっているのは、
弟子の北小岩くんであった。

北小岩 「これでは本物の冬が来た時に、
 むっ!」

弟子が目にしたものは。

北小岩 「こんな巨大な抜け殻は、
 見たことがございません。
 いったい何が
 脱皮したのでございましょうか」
小林 「お前今、
 脱ぐという漢字が入った言葉を言ったな」
北小岩 「あっ、先生」
小林 「相変わらずいやらしいな。
 そんなに女が脱いだところを
 見たいんかい」
北小岩 「確かに脱ぐという漢字が入った単語を
 使いましたが、
 それは脱皮のことでございます。
 この巨大な抜け殻をご覧ください」
小林 「ふむ。
 冬将軍になる過程の抜け殻やな。
 冬将軍は出世魚みたいなもんや」
北小岩 「そうなのでございますか」
小林 「まず、冬足軽から始まって、
 脱皮するごとに出世し、
 最後は冬将軍になるんや」

先生の言など信じるに値しないであろう。

小林 「ともかく、
 抜け殻の手の部分を見てみい」
北小岩 「紙が挟まっております。
 あっ、回転寿司一皿無料券です!」
小林 「やったな。
 直行や!」

何年ぶりの寿司だろうか。
皿にのったしめ鯖を前に、涙ぐむ二人であった。

北小岩 「こんなにおいしいものが、
 この世にあったとは」
小林 「味わいつくされねばならんな」
北小岩 「あまりのおいしさに、わたくし、
 お小水がしたくなってまいりました」
小林 「俺も便意をもよおしてきたわ。
 それにしても、
 信じられないぐらいでかい便所やな」

小便器と大便器にわかれ、用を足し始めたその時。

北小岩 「うあわ。
 便器が回転し始めました!」
小林 「俺んとこもや!」

回転と行っても、
その場でくるくる回るわけではなく、
半径5メートルの円の軌道を、
便器が回るのである。
壁の張り紙には、
便器から外れてまき散らした者は、
10万円の罰金と書かれている。

北小岩 「大変でございます。
 便器と同じ速度で追いかけつつ、
 放尿しなければなりません」
小林 「俺なんかもっと悲惨や!」

世の中には、
面白い回転寿司屋さんがあるんですね。

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2012-10-21-SUN

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