KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の参百六拾九・・・印鑑

ポンポンポンポポンポポン!

北小岩 「いきなり冷え込んでまいりましたね」

ポンポンポンポポンポポン!

北小岩 「わたくしも先生も、
 寒さには極端に弱いのでございます」

それはともかく、
ポンポンポンポポンポポン!
という音は何だろう。

北小岩 「先生はさすがでございますね。
 寒い日には股間を鼓のように叩け!
 と日頃から申しておりますが、
 これほど身体がぽかぽかしてくる方法が、
 他にあるでしょうか」

ポンポンポンポポンポポン! ぐにゅ!!

北小岩 「うげ〜〜〜!」

どたっ!

力を入れて金を叩いてしまったようであるが、
それをかわいそうなどと思う必要はない。

北小岩 「まだまだわたくしの修行が
 足りないのでございますね。
 小林先生ほどの達人であれば、
 このような失敗は決して・・・」

「うげ〜〜〜!」

どたっ!

北小岩 「あの声は、先生ではないでしょうか」
小林 「おっ、北小岩。
 何しとるんや。
 どうやらお前も、
 俺と同じ理由で
 地べたを這っとるようやな」

それにしても、これほどくだらない師弟が
他にいるのであろうか。

「宅急便です。判子をいただけますか」

「はい。ちょっと待ってね」

ブシュ

「ありがとうございます」

小林 「おい北小岩、
 あの家の女が押した判子を見たか」
北小岩 「はい。紙に印として、
 彼女の秘所と同じ形のものが
 押されていたようですね」
小林 「印鑑に異変が起きとるのかもしれん。
 さぐってみるか」

印鑑屋さんに乗り込んだ二人が目にした光景は。

男の客 「黒光りしたいいものつくってくれたね。
 ありがとう。
 じゃあこれ、いただいていくね」
印鑑屋 「まいどあり」
北小岩 「先生、今の方の印鑑、
 押すとリアルなイチモツの形になりますね」

小林 「そやな。
 確かにブツは、
 ひとりひとり長さも形状も違うわけやから、
 十分印鑑として成立するわな」
女の客 「お見事ね。
 これからは認め印が楽しみだわ」
印鑑屋 「まいどあり」
北小岩 「先生、今の方の印鑑は、
 形状ということではないようでしたが」
小林 「そういうことに対する俺の勘は、
 常人の一万倍ぐらい鋭いんやが、
 たぶん印鑑を押す部分に、
 匂いをつけるタイプやろな。
 それも秘所の。
 形状がひとりひとり違うように、
 匂いもひとりひとり違うわけやから、
 十分印鑑として成立するわな」
北小岩 「なるほど。
 匂いを印鑑に。
 これから大いにありですね」

二人が入った印鑑屋の看板をよく見てみると、
『陰鑑屋』と書かれていた。
陰鑑屋は、時代のほんの少し先を
行っているような気がしないでもないが、
それは気のせいであろう。

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2011-10-30-SUN

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