KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の参百四拾九・・・雨の日に

シュッ

ボン

「今日はひさしぶりに、おうどんでございますね」

昭和を感じさせる丸いガスコンロに
マッチで火をつけたのは弟子の北小岩くんであった。

「好物とはいえ、
 さすがに三食パンの耳では飽きてしまいます」

びりっ

「あとはおつゆを入れて、
 おうどんを煮込めばできあがりでございます」

ぐつぐつぐつ

「おつゆのいい香りがいたします。
 スプーンでひと舐めしてみましょう」

がらっ

「なんや、お前。
 おなごのおつゆをひと舐めするとか
 ぬかしとったな。
 それほどまでに、
 自分だけいい思いをしたいんかい」

北小岩 「あっ、先生。
 めっそうもございません。
 わたくし、何年かぶりに
 おうどんを食そうと思い」
小林 「これやな。
 4分の3ほどいただくわ」

じゅるじゅる

北小岩 「では、わたくしは4分の1と
 おつゆをいただきます」

どこまでも謙虚な弟子なのである。

北小岩 「つゆといえば、
 長い雨の季節に突入でございますね。
 わたくし、この季節、
 ややもすると憂鬱になってしまいます」
小林 「デリカシー0のお前にしては
 不思議なこっちゃな。
 じゃあ、俺の友だちに、
 梅雨を極限まで味わう達人夫妻がおる。
 コツを伝授されにいくか」

二人は雨の中、骨だけになった傘をさして、
梅雨達夫妻のもとを訪れた。

梅雨
奥さん
「よくいらっしゃいましたね」
小林 「ひさしぶりやな。
 俺の愛弟子が、
 梅雨の楽しみ方を知りたいと言っててな」
北小岩 「お手数おかけいたします」
梅雨
奥さん
「そんなにかしこまらなくていいのよ。
 梅雨を楽しむには、
 傘をささないことね」
北小岩 「なんと!」
梅雨
奥さん
「大人になると、
 お小水を漏らす自由が
 なくなるじゃない。
 だから私はね、
 雨でずぶ濡れになりながら、
 心ゆくまで漏らすことにしてるの。
 上半身もびしょびしょ、
 下半身もびしょびしょ。
 下半身から湯気をたてながら
 歩くのよ。
 気持ちいいわよ」
北小岩 「確かに赤ちゃんの時には
 漏らし放題だったのに、
 大人になるとおもらしは
 禁じ手となってしまいます。
 奥様のお話をうかがっておりますと、
 大変魅力的な行為に感じます」

梅雨
旦那
「俺はね、少し趣をかえてね、
 梅酒をつくるんだよ」
北小岩 「おいしそうでございますね」
梅雨
旦那
「これからの季節、
 金玉がちょうど梅のようになるから、
 焼酎にたっぷりつけるんだ。
 微妙にイカの香りが混ぜってな。こ
 れがなかなかいけるんだよ」
北小岩 「わたくし、ご遠慮いたしたく存じます」


年に一度の長雨の季節。楽しみ方も、様々なようですね。

小林秀雄さんへの激励や感想などは、
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postman@1101.comに送ってください。

2011-06-12-SUN

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