KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の参百拾伍・・・代

タッタッタッタッタッタッタッタッ

尋常ではない速さでつま先走りをしているのは、
弟子の北小岩くんであった。
よほどの急用があるのかと問われれば、否である。

タッタッタッタッタッタッタッタッ

「向こうから
 小股の切れすぎた女性が接近してまいります」

タッタッタッタッタッタッタッタッ

「かわいらしい子犬ちゃんを連れていらっしゃいます」

キキキキキーー

磨り減った草履でブレーキをかけ、犬に話しかける。

北小岩 「お名前は何とおっしゃいますか?」
「クィーン!」
北小岩 「クィーンちゃんでございますか」
小股の
切れすぎた
女性
「違うわよ。
 この子は『阿蘇子(あそこ)』って
 言うのよ」
北小岩 「そうでございますか。
 触ってもよろしいですか」
小股の
切れすぎた
女性
「ダメよ。
 私の『あそこ』に触らないで!」
北小岩 「しっ、失礼いたしました!」

女性と、女性のあそこが遠ざかっていく。

北小岩 「わたくし不覚にも、
 興奮してしまいました。
 さて、気を取り直して」

タッタッタッタッタッタッタッタッ

北小岩 「あそこにいらっしゃるのは、
 町内で一番気が弱いと目されている
 弱井気一郎さんではございませんか。
 近所のワルガキどもが
 弱井さん宅のカキを
 盗もうとしております。
 しかし、気が弱すぎて
 何も言えないのでございますね。
 では、わたくしが代弁し」

大きく息を吸い込み。

北小岩 「こらっ!
 このカキは弱井さんのものですよ。
 桃栗三年、マスカキ八年と申します。
 君たちのようなマスカキは、
 八年後にお出でなさい!!」
ワルガキ
ども
「うわ〜!」

支離滅裂な言に圧倒され、逃げていった。

弱井 「ありがとうございます。
 『代便』していただき、
 ほんとうに助かりました」
北小岩 「どういたしまして。
 とはいえ、その代便という文字は
 間違っておりますよ。
 むっ、
 どうしたことでございましょう。
 突然大便意を催してまいりました。
 申し訳ございません。
 お便所をお貸しいただけますか」
弱井 「どうぞどうぞ」

鬼の形相で駆け込み。

北小岩 「ふう、
 危なく粗相するところでございました。
 むむっ、いつもより
 数倍太く硬い便が
 こんにちはをしております。
 このままではわたくしの肛門が
 崩壊してしまうでしょう。
 色も見たことがない黄金色。
 はっ、
 これはわたくしの便ではございません。
 弱井さんの便を代わりに出している。
 つまり『代便』しているので
 ございます!」

弱井さんの便は見かけによらず、ご立派だった。
弟子は切れてしまった肛門を
押さえながら出てくると、
病の床に臥せっている
弱井さんの奥さんのか弱き声。

弱井さんの
奥さん
「小用を足したいのですが、
 トイレに行くのがつらくって。
 代わりに出してきてもらえると
 助かるのですが」
北小岩 「それは無理で・・・。
 はっ、
 突然小便意を催してまいりました」

再び便所に駆け込むと。

北小岩 「わたくしのお小水にしては
 熱すぎます。
 それにここまで黄色がかったことは
 ございません。
 わたくしは、奥様のお小水を
 『代便』しているに違いございません!」

突如北小岩くんを襲った『代便』という怪現象。
まだまだ世の中には、
科学では解明できていない下のことが数多ある。
これはそのほんの一例に
過ぎないのかもしれませんね。

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2010-10-17-SUN

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