KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の参百八・・・バス停

「万力でぎりぎり締めあげられるような
 残暑でございますね」

庭で空を見上げる北小岩くん。
人は萎れる暑さだが、草は元気である。

「例年より伸びが早いようでございます。
 こまめに刈らねばなりませんが、
 熱中症にも気をつけねばなりません。
 頭には三角巾、
 股間は蒸れないように。
 むっ!」

蒸れないように短パンを履いていたのだが、
灼熱の中、わきから金玉がこんにちは。

「先ほどから何かが
 焦げている気がしておりました。
 まさか自分の玉が、
 たこ焼きの如く熱せられていたとは。
 危ないところでございました」

如雨露で水をかける。

小林 「植物にやらずに、なぜ玉に水を。
 さてはお前、己の金玉を
 大きく育てて自慢しようとしとるな」

猛暑であろうがなかろうが、
師の言葉に意味などない。

北小岩 「いえ、
 わたくしは今のままで十分・・・」
小林 「虚栄を張っとる場合やないで。
 そんなことより、
 俺の大叔父から召集がかかったんや。
 お前もこいや」

万年金欠の先生であったが、
交通費は送られてきたらしい。
電車のシートに腰かけ。

北小岩 「痛いほどの暑さの中、
 長距離を歩くのは
 リスクがございますからね」
小林 「そやな。
 電車を降りたら、バスに乗り換えや」

ホームを出ると、
おんぼろの車体が二人を待っていた。
最後尾の席に陣取る。

小林 「やっぱりケツがええな」

チリンチリン

なぜか抽選の当たりの鐘が鳴り、
運転手と女性ガイドが乗り込んできた。
ガイドは、下は褌、上はブラジャーだ。
先生と弟子はすかさず最前列に移動した。

ガイド 「ではぴゅ〜といきますよ!」

ピストンがいい感じで運動を開始し、
ブオッと動き出した。

北小岩 「わたくし、
 ウハウハしてまいりました」

十分ほど走った頃だろうか。

ガイド 「次に止まりますのは、
 『チンドミノ私が』で〜す」
北小岩 「チンドミノ私が?」

ブレーキが踏み込まれ、
ガイドがはしゃぎながら降りていく。

小林 「何や、あれは!」

何十人もの男が素っ裸で仰向けになっている。
イチモツは天にそそりたち。

ガイド 「ではいきま〜す。
 ドミノ〜!」

先頭の男のイチモツを蹴り倒すと、
次々に如意棒が倒れていった。
その風景は、荘厳でさえあった。

北小岩 「理解できませんが、
 凄まじいことだけは
 確かでございます」


何事もなかったかのように、
ガイドは再びバスへ。

ガイド 「次は、
 『マン鼓(つづみ)私も』です!」
小林&
北小岩
「?」

バスが停まると、
外には一糸まとわぬ女性たちが何十人も。
いつの間にか、ガイドも褌を外して仲間に入り。

ガイド 「よ〜!」

ポン!

ガイド 「よ〜!」

ポン!

掛け声にあわせて秘所をたたくと、
鼓の音が鳴り響いた。
何事もなかったかのように、ガイドはバスへ。

その後も、
お互いのチンチンを結んで引っ張り合う
『チン綱引き私へ』、
下の毛をピンと弦のように張り、
鼈甲のピックでトレモロをする
『マンドリン私が』など、
理解の及ばない停留所をいくつも経て、
大叔父さんの家に到着した。

数々のバス停が
何を物語っているのかはわからない。
しかし、一度ぐらいは
体験してみたい気もするから不思議だ。
 

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2010-08-29-SUN

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