KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の参百・・・食料自給率

「なんや、このじめじめは!
 生き腐れしそうや」

「先生は、鯖よりも足が早いですからね」

どぐされ師弟が、高温超多湿の町をぶらついている。

小林 「おっ、へちまや」
北小岩 「このお家の
 日よけになっているのでございます」
小林 「涼を求めた肉体が、
 自然に吸い寄せられていくわ」

二人は尻小玉を抜かれた阿呆面で、
人の庭に闖入してしまった。

小林 「おいっ、目ん玉おっぴろげて、
 360度見まくってみい」
北小岩 「むんむむむん!」

破れたフェンスから入ったので
気づかなかったのだが、
木の門柱では椎茸が栽培され、
家の壁からは根性大根が
何本も顔をのぞかせている。

北小岩 「庭でも多種多様な野菜が
 育てられております。
 お風呂場にはバナナ、表札からは大豆。
 奥の深いお家でございます」

「誰ですか、あなた方は」

小林 「いやな、
 なかなかご立派なへちまを
 見つけたので、
 涼をとらせてもらおうと思ってな」

「そうですか。
 このへちまは食用なんです」

北小岩 「あなたさまのお家だけで、
 かなりの食料がまかなえそうですね」

「家だけではありませんよ。ほら」

男がシャツを捲り上げると。

小林&
北小岩
「なんと!」

腕から何本ものかいわれ大根が
伸びているのであった。

北小岩 「毛穴から生えているではありませんか」


「そうですよ。毛穴栽培です。
 特に肥料の必要な野菜は、
 体の余分なものを養分にして育つので、
 メタボの人にもお薦めです。
 ところであなたは、
 日本の食料自給率がどれぐらいか知っていますか」

北小岩 「町の物知りじいさんから、
 カロリーベースで
 40%がいいところだと
 うかがっております」

「そうなんですよ。
 私はそれを憂えています。
 そこでまずは我が家から、
 そして己を用いて食料自給率を上げようと思い、
 実践しているのです」

北小岩 「毛穴に種を入れるのは、
 とてつもなく
 大変なことではないのですか」

「穴というものは、開発すればかなりのものが
 入るようになるのです。
 お尻の穴だってそうです。
 失敬! それはまた別の話です」

北小岩 「・・・」

「マイワイフは、桃や胡桃、アボガドなど、
 びっくりするほど大きな種を入れられますよ。
 いえ、あなたが想像している穴ではなく、
 毛穴にです」

北小岩 「そうでございますか」

「それからですね、
 食べるものを自分で生産することも
 自給率アップに貢献しますが、
 輸入作物を食べずに、
 食べた気になることも大切なのです」

小林 「どういうこっちゃ?」

「今、ご飯をお持ちします」

自給率向上おじさんは、
 二人にお茶碗を渡すと、山盛りによそった。

「お米は国産の優等生です。
 ご飯との相性ぴったりといえば梅干。
 しかし、昨今では梅の輸入量も増大しています。
 ではどうするか」

おじさんはズボンのファスナーをおろし、
金玉一個をこんにちわさせた。

「よくご覧ください。
 玉毛を剃り、赤チンを塗っています。
 ずっと見てると、梅干に見えてく〜る」

催眠術の様相を呈してきた。

北小岩 「わたくし、不覚にも梅干に見えてしまい、
 涎が出てまいりました。
 ご飯が進みます!」


弟子は銀しゃりを頬張った。

「そちらの方はどうですか?」

小林 「俺はイカの塩辛がええな」

「イカも実は結構輸入されているのです。
 これはいかがですか」

指で玉袋と足の付け根の部分をこすると、
先生の鼻前に差し出した。

小林 「うぎょっ!
 超ド級のイカ風味や。
 とはいえ、食欲は完全に失せたわ」

その後おじさんは、
足の裏の臭いをかがせて
そら豆だと言ったりもしたが、
食べた気になるには至らなかった。

しかし、己の体を使ってまで、
食料自給率を上げていこうという
チャレンジングな姿勢。
それは注目に値する気もするし、
まったくどうでもいいような気もする。

小林秀雄さんへの激励や感想などは、
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2010-07-04-SUN

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