KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の弐百六拾六・・・おでこ

「おっ、おおおのお」

洗面台の前で、無理やり人差し指と親指で
おでこを縮めているのは、
弟子の北小岩くんであった。

「いくら縮めても、離すと戻ってしまいます」

紙粘土ではあるまいし。

「おでこを使って、いやらしいことをしとるな」

耳を傾けるに値しない言辞を弄しながら、
弟子の後ろに位置したのは、
まがいもの先生であった。

北小岩 「新たなプレイを
 開発しているのではございません。
 このところ額が広くなってきた
 気がいたしまして、
 コンパクトにしようと
 試みたのでございます」
小林 「若いうちから小さく
 まとまらん方がええな。
 町の文化会館に識者が集い、
 おでこについて話し合っている頃や。
 出向いてみるかいな」

二人のおばかさんは、
三歩進んで二歩下がるという、
非常に効率の悪い歩き方で
やっとのこと会館にたどり着いた。

小林 「さすがにおでこ推進委員会に
 出席するだけあって、
 それぞれ見事なでこっ八ぶりやな」
北小岩 「そうでございますね。
 おしりのような形をした方も
 いらっしゃいます」
小林 「言うなればアールデコや」

意味がないので無視しよう。

小林 「入ろうやないか」

髪の生え際のついた扉を開けると。

小林 「地味な部位について話しているわりに、
 熱い盛り上がりやな」

壇上に目をやると。

司会 「おでこが有効活用されていない現状、
 それをどうしていくかですね」
おでこ
委員A
「その通りです。
 体の上方で前方を向いているのは
 絶好のポジションです。
 このような活用はどうでしょう。
 ヘイ!」

陽気な掛け声にうながされ、男と女が壇上へ。

おでこ
委員A
「ドッキング!」

おでことおでこをくっつけると、
ガチャっという音がした。
「ガタン、ゴトン」と声を発しながら、
壇上を列車のように走った。

おでこ
委員A
「ご覧の通り、連結器がついております。
 町を歩いている時にも、
 相性のいい人と連結できます。
 また、おでこに吊革をつけておけば、
 満員電車で背の低い人たちが使えますね」
司会 「それは有効です」

おでこ
委員B
「ぼくはこれです」

Bが額を人差し指と親指でこすり、
指をつける、はなす、つける、
はなすと繰り返した。
どうしたことか、
おでこから煙のようなものが立ち上った。

おでこ
委員B
「子供の頃に遊んだ
 『ようかいけむり』を応用しました。
 こんなところから煙が出たら、
 見た人は腰を抜かさんばかりに
 驚くでしょう」
司会 「確かに!」


その他にも、
おでこにグー or チョキ or パーを描いて
家を出て、すれ違う人と
じゃんけん勝負をするなどの
レクリエーション的な案も出ていた。

おでこはほとんどの場合、活かしきれていない。
この会議を参考にしない手はないであろう。

小林秀雄さんへの激励や感想などは、
メールの表題に「小林秀雄さんへ」と書いて
postman@1101.comに送ってください。

2009-11-08-SUN

BACK
戻る