KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の弐百六拾・・・勘違い

縁側で動かない男がいる。旅人だったら、
その物体をお地蔵様だと思ったことだろう。

動かない。
まだ動かない。
瞬きも最小限。
ただ一点を見つめている。

小林 「なんや北小岩、
 立ち読みしたエロ本の記憶が
 こぼれ落ちないように、
 仮死状態になっとるんかい」
北小岩 「あっ、先生」

数時間微動だにしなかった男。
それは弟子の北小岩くんであった。

北小岩 「実はわたくし、
 とてつもなく暇だったものですから、
 観察していたのです」
小林 「どうせお前のことやから、
 毛が伸びる様子を
 己の目で確かめとったんやろ」
北小岩 「そうでございます!
 1日に毛髪が
 0.3ミリちょっと伸びるとして、
 体毛の伸びが若干遅いと仮定します。
 しかし、無我の境地で対すれば、
 体毛が伸びる過程を
 この目でとらえられるのではないかと
 思いまして」
小林 「それでとらえられたんかい」
北小岩 「とらえられたようなられなかったような」

暇人の行動も、多種多様である。

小林 「もうちょい有意義な暇のつぶし方が
 あるかもしれんな。
 そや、行ってみよか」

どこに行くのか不明だが、
ろくなところではないだろう。
ほとんど石と化していた北小岩くんは、
うまく立ち上がれずに転倒。
庭石の角で、金玉をしこたま打った。

北小岩 「どこへ向かっているのでございますか」
小林 「たいした人物ではないんやが、
 話していると気が休まる男がいてな」

二人はかたつむりのようにのんびり歩く。
二時間経過。

小林 「着いたな」

薄汚れた門には、肛門とほられている。

「あっ、先生!
 聞いてくださいよ。
 僕は今夏、
 ある女性の『サポーター』になろうと
 決意したのです。
 女性が歓喜したので
 さっそく行動に移したのですが、
 殴られてしまいました」
小林 「心底応援しようというのに、
 なぜ殴られるんや?」
「応援?
 サポーターって、
 水着の下に着用するものに
 なることではないのですか?」


この男は
勘違伊三郎(かんちがい・いさぶろう)と
呼ばれている。
ほとんどすべてのことを勘違いしながら、
生きているのだ。
今回、サポーターになるべく
女性の水着下半身内側に張り付いたのだが、
それは完全な誤りであろう。

勘違
伊三郎
「そういえば、三億円事件の犯人は、
 よく逃げおおせましたね。
 『白パイの男』なんて
 そうはいないですから。
 乳首が白ければ、
 銭湯でもすぐにわかってしまいますしね」
北小岩 「それは白パイの男ではなく、
 白バイの男だと記憶しております」
勘違
伊三郎
「そうでしたっけ?
 僕はそうは思わないな」

北小岩 「伊三郎さんは、
 今何に興味を
 持っていらっしゃるのですか」
勘違
伊三郎
「プロ野球が何よりの好物ですからね。
 ストーブリーグですよ。
 『AF宣言』した選手を、
 確実にゲットしたいですね」

どう考えても、FA宣言の間違いであろう。
なぜに野球選手がアナ・・・。

この地域で時間をつぶすなら勘違伊三郎。
だが内容がくどすぎて、
長時間の会話には耐えられそうもない。

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2009-09-27-SUN

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