KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の弐百伍拾弐・・・栞

びゅ〜

「あっ、
 どこまで読んだか
 分からなくなってしまいました」

読書の最中、
どんぶらこどんぶらこと
船を漕いでいた弟子の北小岩くん。
完全に眠りに落ちると
読み終えたページが行方不明になるので、
トイレットぺーパーの切れ端をはさんでいたのだが、
風に持っていかれてしまったのだ。

北小岩 「わたくし、記憶力がひ弱で、
 何度も何度も同じところを
 読んでしまいます。
 今回も同じ轍を踏んでしまいそうです」

いま一度書物に目を通してみるのだが、
やはり迷子になってしまっていた。

北小岩 「仕方ございません」

常人の数倍鼻が効く優男は、
ページの匂いを嗅いで、
そこに自分の指の匂いがついていないか
確かめてみた。

小林 「何しとるんや。
 エロ本のおなごの秘所を嗅いでも、
 ウハウハな香りはせんで」

相変わらず品性にかけることをほざきながら
近づいてきたのは、ご存知馬鹿先生。

北小岩 「そうではございません。
 わたくし、
 十返舎一九の東海道中膝栗毛を
 楽しんでいたのでございますが、
 風で栞がわりの
 トイレットペーパーが飛び、
 どこまで進んだのか
 わからなくなってしまったのです」
小林 「その栞は危険やな。
 便利とはいえ、
 万一便がついとったら一大事や。
 かわいい弟子のために、
 おニューな栞を買うたるわ」
北小岩 「先生・・・」

涙もろい弟子の目から、熱いものがこぼれた。
畳の上でそれを見ていた小さなクモは、
迷惑そうにジャンプし熱いものをよけた。
二人は町唯一の栞専門店
「しおりのおしり」に向かった。

小林 「たのもう!」

先陣を切り、場違いな台詞で暖簾をくぐっていく師。

小林 「我が愛弟子に、
 栞をプレゼントしようと思うんやが、
 似合いのものを見繕ってくれや」
しおりの
おしり店員
「そうですね。
 これなんかはいかがですか」

店員が持ってきたのは、イカ型の栞だった。

しおりの
おしり店員
「栞をしたまま、
 結局先を読まない人が、
 結構いるんですね。
 そこで当店は、
 オリジナル商品を開発しました。
 この栞をはさんでおくと、
 二日まではそのままなのですが、
 三日目を過ぎたころから、
 イカ臭い匂いを発するようになります。
 本を読まずに一週間たつと、
 本にしっかりと
 蒸れたイカ臭がついてしまいます。
 読書をうながす栞ですね」
小林 「北小岩にぴったりな気もするが、
 他にはどうや」
しおりの
おしり店員
「では、こちらはいかがでしょうか。
 従来の栞は書物に挟みこむものが
 主流でしたが、
 書物を巻いて栞でとめるのです」
小林 「?」

店員は張り型を持ち出し、
デモンストレーションを始めた。

しおりの
おしり店員
「これがあなたのイチモツとして、
 ページを開いて巻きつけます。
 そして、とれないように
 亀頭型ハット栞をかぶせるのです。
 イカ型栞の
 生タイプとでも申しましょうか」
北小岩 「うかがうまでもございませんが、
 そのまま本を何日も読み進めなければ」
しおりの
おしり店員
「もちろん、強烈にイカ臭くなります」


読みかけの本が、
そのままつん読に終わってしまうことは
多々あるだろう。
読書の続きを栞がうながすという着眼点は
悪くはない。
だが、あまりに発想がイカ臭い。

もっとも、北小岩くんには不似合いであったため
薦められなかったのだが、
カプセル型栞もあるという。
読まずに数日経過するとカプセルが破れ、
中から紙食い虫が出てきて
本を食べてしまうんだとさ。

 

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2009-08-02-SUN

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