KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の弐百伍拾・・・携帯

「もう夏でございますね」

干からびる寸前のなめくじが如く、
魂を抜かれた状態で歩いているのは、
弟子の北小岩くんであった。

「向こうから誰かが近づいてまいります」

顔を上げる元気もない。
しかし、その時・・・。

「ぐわはっはっはっ」

北小岩 「むっ、
 一人でいるのに
 いきなり大声を出すとは。
 怪しい男に違いございません!」

自分で勝手に拳法をアレンジしてつくった、
チン法の構えで対峙した。

小林 「どうしたんや。
 ビンビンに臨戦態勢やないか」
北小岩 「この方が。
 あっ、わたくしの勘違いでございました。
 携帯電話をかけているだけでした。
 気合いを入れて、
 攻撃を仕掛けようとしているのかと」

怪しい者に間違われた男は、
迷惑そうにそそくさと去ってしまった。

北小岩 「携帯電話・・・。
 わたくしは一度も
 手にしたことはございませんが、
 どのようなものなのでしょうね」
小林 「そうやな・・・」

この師弟、携帯には縁がない。
なにせ近所の人たちとは、
糸電話で通話しているぐらいなのだから。

小林 「町のへそ下三寸あたりに
 携帯電話屋さんがあるから、
 行ってみるかいな」

もちろん購入資金などないのだが、
どの程度携帯が進歩しているのか確かめるために、
阿呆面さげて店内へ。

セクシー
女性店員
「いらっしゃいませ」
北小岩 「はっ、はい」

弟子はすでにあがってしまっている。

小林 「我々のレベルにふさわしいブツがあったら
 買おうと思っとるんやが、どやろ」
セクシー
女性店員
「それはもう、ウハウハですよ」

何人もの男を弄んできたであろう妖艶な女性が、
説明を始めた。

セクシー
女性店員
「近頃流行のものは、
 男女別仕様になっております。
 特に女性用に、自信がございます」
北小岩 「どのような?」
セクシー
女性店員
「今までのモノはひらべった過ぎましたし、
 握った時の感触にも、
 硬さにも問題がありました。
 女性を決して
 満足させるものではありません。
 そこで製造会社に依頼しまして、
 特殊シリコンを用いて製品化したものが
 これです!」
北小岩 「むっ!」

どう見ても、イチモツにしか見えない。
その先っぽに、てらてらと光る唇を押し当て、
『もしもしぃぃぃぃ、いいああ、いい』と、
意味もなく猥褻な言葉を口走る。

 

セクシー
女性店員
「この携帯のいいところは、
 例えば地震が起きて長期間停電し、
 電池残量がなくなった場合でも、
 自己充電できることです。
 三分間こうすればいいんですよ」

細い指で輪っかをつくり、
携帯の胴体をすばやく上下動させた。

北小岩 「わたくしはまだまだ修行が足りません。
 充電しているのを見ているだけなのに、
 興奮してきてしまいました」
セクシー
女性店員
「これは国内仕様なんです。
 グローバルタイプは」
小林 「今の携帯は、
 そのまま海外でも通話できるものがあると
 聞いとるが、そうなんやろ」
セクシー
女性店員
「それももちろんですが・・・」

店員が顔を赤らめ取り出したのは、
国内仕様のモノより2倍ほど長くて太い携帯であった。

小林&
北小岩
「・・・」


その後男性仕様の製品についても
レクチャーされたのだが、
いやらしすぎて、ここに記すことはできない。

小林秀雄さんへの激励や感想などは、
メールの表題に「小林秀雄さんへ」と書いて
postman@1101.comに送ってください。

2009-07-19-SUN

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