KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の弐百弐拾九・・・暦

「この町に来たのは、10年ぶりだなあ」

「もうそんなになりますか。
 時の流れは早いものでございます」

北小岩くんの学生時代の友人は、
隣町のエロ本市を訪れたついでに、
ぶらっとなつかしの場所に立ち寄ってみたのだ。

北小岩 「あっ、
 カレンダーさんでございます。
 お早うございます!」
カレンダー
さん
「ああ、どうも」
北小岩 「これぐらいの髪の伸びですと、
 もうすぐ三月ですね」
友人 「?」
町の
おじいさん
「おう、カレンダーさん。
 その長さじゃと、
 これからはあたたかくなる一方じゃな」
カレンダー
さん
「そうですね」

この町には、暦に関して何らかの目安があるようだ。
友人は怪訝な顔つきで、北小岩くんに訊ねた。

北小岩 「実はですね、
 カレンダーさんは毎年三月一日に
 スキンヘッドにするのです。
 そのまま一年髪を伸ばし、
 また翌年の三月にスキンヘッドにします。
 ですから、カレンダーさんの髪が
 どれくらい伸びているのか見ると、
 今が何月かわかるのです。
 つまり彼は、
 町のカレンダーになっているのです」
友人 「なるほど。
 重宝な人だな」



北小岩 「それだけではございません。
 カレンダーさんは
 わたくしたちに月を教えてくれますが、
 奥様には特別に
 日にちも教えているのです」
友人 「どうやって?」
北小岩 「月の初めに陰毛を剃るのです。
 一ヶ月伸ばし、
 そして次の月初めに
 またキレイに剃ります」
友人 「奥さんは彼の頭を見て何月か教えられ、
 股間を見て何日かを知るわけだな」
北小岩 「そうなのです」
友人 「奥さんだけの
 スペシャルカレンダーか。
 夫婦仲にいい影響を与えそうだな」
北小岩 「わたくしたちは仲睦まじい二人のことを、
 『じんじろ夫婦』と呼んでおります」
友人 「‥‥‥」

そこに通りかかったのが。

北小岩 「あっ、十年カレンダーさん!
 なんと髪の毛を剃っております!!」
町の
おじいさん
「ということは、
 もう十年たったんじゃな。
 あの頃は、俺の友だちも
 まだみんな元気じゃったし、
 ほんのたまにじゃが
 屹立することもあったなあ‥‥‥」

おじいさんが涙ぐむ。

北小岩 「10年カレンダーさんは、
 10年に一度スキンヘッドにします。
 そこから伸ばし続けますので、
 氏が再び毛無しになっていたら、
 10年の歳月が流れたことがわかるのです」
友人 「う〜む。
 この町にはとっても地味だが、
 町に役に立っている人が多いんだな」




第35代アメリカ大統領ジョン・F・ケネディは、
就任演説で語った。
あなたの国があなたのために何をしてくれるかではなく、
あなたが国のために何ができるのか問うてみようと。
カレンダーさんたちは、
町のために何ができるのかを問い、実行している。
金の力に頼らずに、町の役に立つことは、
まだまだたくさんあるであろう。

小林秀雄さんへの激励や感想などは、
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postman@1101.comに送ってください。

2009-02-22-SUN

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