KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の弐百弐拾弐・・・年始様々

「何があけたのかと、聞いとるんじゃ!」

「申し訳ありません。
 深く考えずに言葉を使っておりました」

新年早々、通りすがりの老人にやり込められた後、
ボロボロの案山子の如く立ちすくんでいたのは
北小岩くんの友、
珍歩劣(ちんぽおとる)氏であった。

小林 「どうしたんや。
 尿道がふさがったような顔をして」
珍歩 「あっ、先生。
 それに北小岩くん。
 実をいいますと、
 道ですれ違った見知らぬおじいさんに
 『あけましておめでとうございます』と
 挨拶したところ、
 何があけたのかと厳しく問い詰められ、
 返答に窮してしまいました」
小林 「どうせまた、ケツの穴があけたのか、
 女性の秘所があけたのか、
 はっきりせいと言われたんやろ。
 普通に年があけたといえばええこっちゃ」
珍歩 「そうなんです。
 しかし、勢いに押されているうちに、
 年があけたのではなく、
 女性の秘所がぱっくり口をあけたことが
 おめでたいような気になってしまいまして」
北小岩 「災難でしたね」
珍歩 「です。
 それはそうと、あそこのお家、
 窓からお父さんらしき人が
 見え隠れしていますが、
 動きが奇妙なんです。
 2種類のカレンダーを右手と左手で持ち、
 擦り合わせているような」
小林 「カレンダーの筆おろしをしてるんや」
珍歩 「へっ?」
小林 「この町の正月は、他とはかなり異なる。
 年始はまず、
 カレンダーの交尾から始める。
 年明け前に掛けられているカレンダーは、
 どことなく頼りない。
 童貞だからや。
 カレンダーには男カレンダーと
 女カレンダーがあるので、
 ズバッと筆おろしさせる。
 それでいっちょ前にし、
 今年の日々を堂々と示せるようにするんや」

珍歩 「私は故郷では
 物を知りすぎている男と
 呼ばれておりましたが、
 それはまったく存じませんでした」

その時。

「うおっき〜〜〜ん!」

向こう正面の広場で、男が宙を舞った。

珍歩 「何が起こったのでしょうか?」
北小岩 「股間羽根つきですね。
 左右にトランポリンを置き、
 金玉に羽根をつけた男が
 ジャンプして移動します。
 ベッドに着床する前に着物の女性が、
 羽子板で打ちます。
 その痛みに耐えつつ、
 男性は商売繁盛を祈り
 再び跳躍するのです」

小林 「昨年なんか、
 俺が信じられんほどの活躍をしたで。
 何せ玉がデカいから、
 お嬢様方の打ち損じがなかったからな」

そんなことはない。
標的が小さすぎて誰も打てずに、追放されたのだ。

珍歩 「なかなか粋な町ですね」

うぎょ〜っ!

珍歩 「今の叫びは?」
北小岩 「門松肛門初めです。
 尖った竹の上に座って、
 苦しいことなんかシリませんの年にします」
珍歩 「・・・」

先生と弟子が暮らす町は、
ろくでもない正月を過ごす。
町角には昨年のサンタクロースの抜け殻が
多数落ちていて、その髭を陰部につけて踊る者や、
大晦日に陰毛を剃り初毛出(はつもうで)と呼んで、
新年に生えてきた毛を愛でる輩もいる。

寺には局部賽銭箱があるが、語るべきものではない。
カルタのかわりにカルテといって、
大人がお医者さんごっこのようなこともする。
馬鹿な町に住む馬鹿な人たち。
新年がおめでたいというより、頭がおめでたい。
ただそれだけの話であろう。

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2009-01-04-SUN

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