KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の百九拾壱・・・梅雨


北小岩 「ふう〜〜〜。
 プウ〜〜〜ッ」
小林 「どないした。
 ため息まではよしとしよう。
 だが、最後のプウ〜〜〜ッはなんや」
北小岩 「失礼いたしました。
 わたくし、実は梅雨が
 大の苦手でございまして。
 あのじめじめな感じを思い、
 ため息をつきましたところ、
 勢い余って口からおならが
 出てしまった次第でございます」
小林 「口から屁を出せるようになれば、
 それはそれでたいしたもんや。
 とはいえそのように梅雨を
 気嫌いしておったら、
 風流な男にはなれんな。
 向こう正面の町に住んどる風流さんから、
 梅雨の楽しみを学んできなさい」

不肖の弟子は、
中古の一輪車に乗り向こう正面の町へ向かった。

北小岩 「桁外れな風流人とは、
 どのような方でございましょうか。
 むっ、この家ですね。
 ごめんくださいませ」

朽ち果てる寸前の戸を開け、呼びかけてみる。
中からにこやかな老人が顔を出し、手を振った。
中指と人差し指の間から親指を出している。
強い力で指を締め付けているため、
親指が赤黒く変色している。

北小岩 「うちの先生からこちらに梅雨を」
風流さん 「プウ〜〜〜ッ。
 失敬失敬。
 近頃口からしきりに屁が出てな。
 まずはこれじゃ」

老人はいきなり着物の裾をたくしあげた。
下帯はつけていない。

北小岩 「たっ、確かに風流な!」

じいさんの陰毛があるべき部分には、
一面苔が敷きつめられている。

風流さん 「これからの季節、
 雨に濡れると苔の緑が
 一段と映えるんじゃな。
 わしはこの部分をお寺だと思うとる。
 ほら、チーンという音が
 聞こえてきそうじゃろ」
北小岩 「やや萎れ気味とはいえ、
 チンがございますからね。
 小さな苔寺と
 言えなくもないかもしれません」

風流さん 「チンつながりと言うことでいえば、
 梅雨ならではの戦いというものが
 あるんじゃ」
北小岩 「梅雨と戦い?
 わたくしの中でまったく結びつきませんが」
風流さん 「そろそろ姿を見せる頃じゃろ」

裾をまくったまま縁台から飛び降りると、
あじさいに突進。

風流さん 「おったな。
 よく見ておくんじゃ。
 チンチェスト!!」

大声を上げると、
あじさいの葉の裏にいたカタツムリに、
珍棒をたたきつけた。

風流さん 「勝った!」


棒にたいした硬度はなかったが、
カタツムリは思わず角をひっこませた。
(※カタツムリには寄生虫がついている場合が
  ありますので、よい子のみなさんは
  決して真似をしないでください)

風流さん 「夏に向けて、
 カタツムリと戦い勝利をおさめることで、
 自信をつけとくんじゃ。
 おっと、降ってきよった。
 そこまで出かけようか」

奇妙な傘を開く。

北小岩 「随分派手ですね。
 なぜか人を興奮させるものがございます」
風流さん 「これはな、パンティで作った傘なんじゃ。
 濡れると透けてくる。
 しばらく雨に撫でられていると、
 液体が滴り落ちてきてな。
 つゆだくじゃな」

この老人、果たして本当に風流人なのだろうか。
ただ助平なだけのまがい者である気がしないでもない。
梅雨を楽しもうという気概だけは、
何となく伝わってくるのだが。

小林秀雄さんへの激励や感想などは、
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postman@1101.comに送ってください。

2008-06-01-SUN

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