KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の百九拾・・・クラシック


小林 「その紙切れはなんや?
 やけに大事そうやないかい」
北小岩 「明日、中学時代の友人が、
 クラシックコンサートに出演するのです」
小林 「お前の友だちにも、
 随分ハイカラな男がおるんやな」
北小岩 「わたくしなどは中学生の時、
 自分が将来何をしたいかわからず、
 エロ本をただまわし読みしているだけでした。
 しかし彼は、その頃から将来に向かって
 一歩ずつ歩んでいたのです。
 苦学して音楽の学校を卒業いたしました。
 専門は打楽器です。
 彼の夢はオーケストラに入ることだったのですが、
 オーディションにはなかなか受かりませんでした。
 その夢がついにかなったのです。
 シンバル奏者として、明日デビューいたします」

コンサート当日。
弟子と馬鹿先生は一張羅の服を着込み、
会場であるドバット公会堂の前列で開演を待っていた。

小林 「クラシカルミュージックは、
 若い頃俺も少々齧ったからな。
 お前よりかなり詳しいで」

壇上横の扉が開き、団員たちが姿を現した。

小林 「指揮者が登場する前に、
 ひときわ大きな拍手で迎えられるのは、
 コンサートマスターや」

観衆の拍手がボリュームを上げる。
だが、様子がおかしい。

北小岩 「他の方は黒いタキシードでキメているのに、
 コンサートマスターは、
 黒は黒でも肌が黒く、
 ブリーフしかはいておりません。
 それに腰をカクカク動かしているようです」
小林 「むっ!
 あいつはコンサートマスターやない。
 『インサートマスター』や!」


隣でAVフェスティバルがあり、
男優が会場を間違えて混ざってしまったらしい。
主催者が不手際をわび、
まずは本物のコンサートマスターが、
続いて指揮者がなぜか二人登場した。

北小岩 「友だちの話では、
 このオーケストラは
 ダイナミックな表現を追及しているために、
 男と女のダブルコンダクター制を
 とっているらしいのです」

マンを持して、演奏が始まる。

小林 「聴いたことのない曲やな」
北小岩 「それにあの指揮者たち、動きが妙です。
 女性はフォルティッシモになると
 股間をまさぐったり、
 ノーブラのお乳を上下動させたりしております。
 男性のタクトは伸びたり縮んだりしているし」
小林 「指揮棒ではなく、如意棒を使っとるな」

だが、股間まさぐり指揮は
男性奏者のボルテージをあげ、
伸びたり縮んだりは女性奏者を恍惚とさせ、
演奏に艶っぽさをあたえた。

北小岩 「友の出番は一ヶ所しかございません。
 しかし、その一ヶ所のために、
 彼は来る日も来る日も
 シンバルを鳴らし続けてまいりました。
 もうすぐ彼の夢の瞬間が訪れます」

待機していた友が立ち上がった。
緊張で手足が震えている。
何とか呼吸を整え、魂の一鳴りのために両手を広げた。
渾身の力を込めて、栄光のシンバルが鳴った!!
・・・はずだったのだが。

何かがつぶれるにぶい音がし、
友が床に倒れてのたうちまわっている。
巨大なシンバルで、
力いっぱいちんちんを挟んでしまったのだ。

 
北小岩 「この日のために
 命懸けで練習してきたのに・・・。
 うっうっうっ」

息をつまらせる弟子。

北小岩 「うっうっ・・・うわはははははは」

どんなに苦しい練習を積んでこようが、
やはり笑えるものは笑えるのだ。
クラッシックコンサートでは珍しく、
会場に大爆笑が巻き起こった。
こうして友は、どんな名手よりも印象深く、
クラシック界へのデビューを果たしたのだった。

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2008-05-25-SUN

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