KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の百八拾七・・・指輪


小林 「郵便あったか」
北小岩 「DMが2通ですね。
 1通はエロ本の見本市。
 もう1通は指輪フェアのお知らせです。
 あっ、指輪は3軒先の
 夢野さんの娘さんのハガキが
 間違えて入っておりました」
小林 「ポストに入れてきてやれや。
 ただし、フェアの日時と会場は
 チェックしといてな」
北小岩 「一週間後に隣町のラブ&ラブホールで
 10時開場でございます」

先生が何かたくらんでいる。
といっても、ミドリムシ以下のレベルの知能なので、
そんなに深い考えが浮かぶわけは無い。
会場に行けば
若い女性がたくさん集っているはずなので、
もしかしたら何かいいことがあるかもしれないという、
淡くどす黒い期待を持っただけなのだ。
当日会場は、思惑通り若い女性であふれていた。

北小岩 「わたくし、今まで指輪には
 毛ほどの興味もございませんでしたが、
 仔細に眺めてみると
 どこか魔性を感じますね」
小林 「俺はお前と違って、
 めちゃめちゃ興味あるで。
 女性に喜ばれるものは、
 指輪とでっかいちんちんや」

勘違いも甚だしい。
というよりも、
女性に拳骨で鼻を数発殴られたほうがいいような、
完全に阿呆な考え方である。

北小岩 「あの人だかりは
 何でございましょうか」

弟子がしゃべり終える前に、
先生はすでに輪に加わっていた。
そこには<TRUE LOVE婚約指輪&結婚指輪>と
大書された看板がかかっていた。

セールス
マン

「エンゲージとマリッジ。
 女性にとって、この二つのリングほど
 大切なものはありません。
 しかしどうしたことでしょう。
 十年一日の如し。
 いえ、百年十日の如しで、
 まったく進化がみられません。
 そこで私たちのカンパニーでは、
 ばっこんと的を射た指輪を開発いたしました」


どどめ色の大きなカバーが除かれると、
そこにはなまこがディスプレイされているかのように、
様々な大きさのちんちん状のモノを装着した指輪が、
大量に吊るされていた。

セールス
マン
「やはり愛する彼のモノと同じモノを
 指輪にすべきでしょう。
 婚約指輪は平常時の大きさ、
 結婚指輪はMAXになった状態のモノを
 お薦めしております」
レディA 「どんな種類があるのですか」
セールス
マン
「グレードでいきますと、
 生寸法を測って作った
 オーダーメードが最高級。
 それからプレタポルテ。
 一番廉価なものは吊るしとなっております」



レディB 「私、子供の頃から
 結婚指輪は真珠って決めてるんだけど」
セールス
マン
「ご心配には及びません。
 そのような方も
 たくさんいらっしゃいますので、
 このちんちん型指輪には、
 真珠が入れられるようになっているのです」
レディC 「こんな指輪恥ずかしくて、
 つけたまま街を歩けないわ」



セールス
マン
「大丈夫です。
 シャイな方のために、
 前バリも用意しております」
レディD 「そんなモノを作っちゃって、
 もしも婚約を破棄された場合は
 どうするのよ」
セールス
マン
「その時は床に叩きつけて
 こなごなに割ってください」

さすがの小林先生も、
口を間抜けにあけたまま、話に割って入れなかった。
確かに、婚約指輪にも結婚指輪にも、
あまりオリジナリティーは感じられない。
とはいえ、
このような形状のモノが望まれているのであろうか。
大いに疑問である。
材質も何でできているのかよくわからない。
セールスマンの話では、一番高価な指輪は、
平常時の形のモノを上下にさすると
大きくなるというのだが。

小林秀雄さんへの激励や感想などは、
メールの表題に「小林秀雄さんへ」と書いて
postman@1101.comに送ってください。

2008-05-04-SUN

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