小林秀雄のあはれといふこと

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき
言の葉を一つ一つ採取し、

深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。


其の百六拾・・・ペット


小林 「ぬるい冬が続いていると思ったら、
 いきなり春やな」
北小岩 「そうでございますね」
小林 「フライング気味のソメイヨシノが、
 恥ずかしげに
 蕾を開こうとしている頃やろ」
北小岩 「まるでパンチラのようです」
小林 「うむ。ではのぞき見に行こうかな」
相変わらず意味のない先生と弟子の会話である。
二人は近所の子供たちから
お下がりでもらった一輪車に乗り、散歩に出た。
小林 「変やな。
 車輪のついたタンブラーを
 リードで引いとる若いヤツが
 たくさんおる。
 ヨーロッパなどでは、
 結婚した二人が車の後ろに缶をつけて
 ガラガラ走ったりするが、
 何か関係あるんかいな?」
北小岩 「あそこにピンクとゴールドのブツを引いた
 カップルがおります。
 話をうかがってまいりましょう。
 あのう、お忙しいところ
 大変申し訳ございません。
 そのタンブラーは何なのでしょうか?」
カップル女 「若い子たちの間で流行しているんだけど、
 知らないの?
 これはペットなのよ」
北小岩 「タンブラーが
 ペットなのでございますか?」
カップル男 「違うね。
 この中には
 自分のおならが入ってるんだよ。
 屁がペットなんだ」
北小岩 「なんと!」
カップル女 「各自お気に入りのタンブラーを用意して、
 おしりにかぶせておならが出たら
 蓋を閉めるの。
 おならって可愛らしいじゃない。
 ペットにしない手はないでしょ。
 これからは
 “ちょっぴり恥ずかしい”がトレンド。
 私たちはこれを
 『おなペット』と呼んでいるわ」
北小岩 「おならのペットで『おなペット』‥‥。
 小林先生の必需品の意味とは
 かなり異なりますね」
カップル男 「もう21世紀も6年以上過ぎただろ。
 時代とともに言葉は変わっていくものさ。
 おなペットにも新しい香りが必要なんだ。
 屁は自然志向だし、
 溜め込むよりもきちんと出した方が
 カラダにもいい。
 生きている限り尽きない。
 だからこのムーブメントは、
 HEHAS(ヘハス)とも言われている。
 つまり
 【屁styles Of Health And Sustainability】
 =継続可能な健康屁生活なんだね」
カップルの話を聞いている間も、
次々ペットと散歩する若者が通り過ぎて行った。
歩くたびに振動でプップッと鳴るよう
細工されているものもある。
カップル女 「あの人は自分のおならの音を
 録音しているのよ。
 私にはまだそこまでの勇気はないなあ」
北小岩 「んっ?あれは凄いであります!」
山のような大男が、
タンブラーを30両連結にして全力疾走している。

小林 「まるで貨物列車のガス車のようやな」
北小岩 「あっ、先生」
小林 「流行に過敏な俺たちも、
 さっそくタンブラーを
 用意せねばならんな。
 まあ俺は屁も大物やから、
 ドラム缶ぐらいの容器が必要やがな」

そんなものは無駄であろう。
先生は屁まで小物なので、
フィルムの小さなケースぐらいで十分だ。
屁は世につれ、世は屁につれ。
今、屁が長年の苦節を経て、
ペットとして大きな一歩をひりだした。
この流行がどこまで続くのか、
時代の匂いを嗅ぎつつ注目したい。

2007-03-18-SUN
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