小林秀雄のあはれといふこと

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。


其の百拾六・・・納涼


蝉も落ちる酷暑の頃。
「先生、納涼会の招待状が届きました!」
弟子の北小岩くんが、
郵便受けから大粒の汗を拭いながら走ってきた。

小林 「う〜む、知らんヤツからやな」
北小岩 「とはいえ今年の暑さは尋常ではございません。
 ここで涼をたしなむのもまた一興だと思われます」
小林 「俺は遠慮しとくわ。
 一人で行ってきたらええ」
招待状の差出人は
変性欲太郎(へんせいよくたろう)氏であった。
翌昼、北小岩くんは集合場所の
変性氏宅に向けて歩を運んだ。
北小岩 「すみません。小林先生は所用で来られず、
 わたくしが単独でまいりました」
変性 「それは残念。
 ところであなたは弟子の北小岩さんですね。
 さっそくですが、
 個室で下着を履き替えてください」
参加者はただ一人。渡された袋には、
大人用のおむつが入っていた。
変性 「装着しましたね。では出発!」
くねくねした道を十分ほど歩くと、
納涼会一行はJR山手線の駅に到着した。
変性 「これから納涼会場に入場します」
山手線に乗り込んだものの、
事態を飲み込めず怪訝そうな北小岩くん。
変性氏がするすると近づき、耳元でささやいた。
変性 「よりどりみどりですよ。
 シートに座っている女性の中から、
 お気に入りを選んで前に立ってください。
 うひひひひ」
北小岩くんはスレンダーなカラダの
濡れた唇をした美女に歩み寄ると、
納涼会主催者にひそひそ声で尋ねた。
北小岩 「それでどうするのですか?」
変性 「ちょうど女性の眼前に股間がきていますね。
 そこで放尿するのです」
北小岩 「なんと!」
変性 「もちろんいちもつを出して放尿すれば
 罪に問われますが、
 おむつをしているわけですし、
 怪しげな動作さえしなければ
 捕まることはありません」
北小岩 「しかし‥‥」
変性 「今ここであなたのズボンを八つ裂きにしたら、
 女性はどう思うでしょうか」
北小岩くんのズボンに
巨大なハサミが押し当てられていた。
もしズボンを切られ
おむつをしていることがばれたら、
変態と叫ばれること必定であろう。
北小岩 「わかりました。トライしてみます」
意識を集中し括約筋をゆっくりと緩めてみる。
だが、好みの女性を前にした興奮と緊張で、
なかなか放尿に至れない。
そこから三駅過ぎたあたりで、
やっとちょぼちょぼ出始めた。
半分ほど放出したところで、女性が席を立った。
北小岩くんは半身になった拍子に、
尿が引っ込んでしまった。
北小岩 「志半ばにして止まりました」
変性 「仕方ない。そのまま最後まで出し切りなさい」
北小岩くんの膀胱が空になるのと、
膏薬を貼ったおばあさんが
目の前に座るのが同時であった。
北小岩 「無事終了いたしました。
 しかし、なぜこれが納涼会なのですか?」
変性 「このまま強冷房のきいた
 山手線で3周するのです。
 今はおむつの尿が温かいですが、
 そのうち水分が冷えて陰嚢が縮みあがります。
 気がつきませんでしたか。
 納涼会の納という字の横に、
 小さく嚢の字が書いてあったのが。
 つまりこの催しは陰嚢を
 とことん冷やすための
 『嚢涼会』(のうりょうかい)なのです」

1周を過ぎたあたりで、
早くも北小岩くんの陰嚢は
孤独を感じるほどに冷やされてしまった。
まだ2周残っている。
世にも汚らわしい『嚢涼会』は続く。

小林秀雄さんへの激励や感想などは、
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2004-08-15-SUN

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