小林秀雄のあはれといふこと

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。


其の百参・・・申告


「先生、わたくしに怪しげな封書が届いております。
 ご覧いただけないでしょうか」



郵便受けから北小岩くんが血相を変えて戻ってきた。
手にはピンク色の封書が握られている。

小林 「ついにお前にも来たか。
 まあ、やっと一人前の男として
 認められたというこっちゃ。心配するな」
封書の表には、ぱっくりと口を開けた
いやらしい貝の透かしが入っている。
北小岩 「おっしゃる意味がよく分からないのですが?」
小林 「差出人を見てみい」
北小岩 「日本国性税務署と書かれております」
小林 「つまりやな、
 それは性に関する申告の督促なんやな。
 一般に『桃色申告』と呼ばれているものや。
 男の場合、小便をする以外に
 用いられるちんちんは、
 奢侈品とみなされ使用頻度に応じて
 税金が課されるんや。
 お前は今まで回数が少なすぎたから
 大目に見られてきたが、
 今年からきちんと申告せんと
 痛い目にあうで」
北小岩 「わたくし、青色申告と白色申告は
 聞いたことがありますが、
 『桃色申告』と言うのは初耳でした」
小林 「甘いな。
 俺なんかはちんちんが
 一本では賄いきれないほど
 おなご衆に人気やろ。
 だから毎年多額の性金(せいきん)を払っとる。
 まあ、いわゆるチン高額納税者やな」
生まれてから一度も女にモテたことのない小林先生が、
チンの高額納税者であろうはずはない。
実際は毎年納税免除になっているのである。
北小岩 「どのように申告すればよろしいのですか?」
小林 「コトに及ぶ時は、
 1回1回のピストン回数や所要時間、
 発射の回数、そして相手が
 お前のプレイに対してどう感じたかまで、
 詳細に記録しておかねばならん。
 それを基にちんちんの貸借対照表や
 損益計算書をつくり、決算報告書にまとめて
 性税務署に提出するんやな。
 女性がどう感じたかはかなり重要やで。
 満足させていれば控除の対象となるんや」
北小岩 「でも、それは限りなく自己申告に
 近いものですから、
 インチキができてしまうのではないですか?」
小林 「性の税務署の方々は
 下半身にかけてはプロ中のプロや。
 ウソの申告などすぐに見破ってしまう。
 そうなったらマル査ならぬペニ査を派遣され、
 ちんちんの減り具合まで
 とことん調べ尽くされてしまうや」
素人目には分からないが、ちんちんは1回ごとに
ほんの少しずつ磨り減っているらしい。
睾丸がどの程度の衝撃を受けたかも、
プロが見れば一目瞭然である。
それでも非を認めない場合には、
ちんちんにウソ発見器を装着されてしまう。
ウソをつくたびにちんちんが汗をかき脈が乱れるので、
それを見逃さずに発見器は容赦なく
ギリギリと締め付けてくる。
早目に真実を述べないと、一生後悔することとなる。
小林 「重大な申告漏れをしている場合は、
 税務署に金玉使用の権利をとられ、
 以後は税務署から借りて
 使用しなければならなくなる。
 これを借金という。
 さらに悪質な脱税をしている場合、
 追徴金として金玉を抜かれて
 持って行かれてしまう。
 これを物納と呼ぶ」
北小岩 「ひぇ〜〜〜。恐ろしいことでございます。
 ところでもしもコトに及んで
 発射に至らなかったら、
 それはどう見なされるのですか?」
小林 「そこまでの過程で快感を得ているので
 益と見なされ、みなし課税がかかるやろな。
 避妊具やゼリーなどの補助用具は
 必要経費として認められるから、
 きちんと申告しといたほうがええで。
 俺が税理士にかわってチェックしてやるから、
 ちょいと今年の使用回数を書き出してみい」
北小岩くんは必死になって今年の性体験の記憶を遡った。
正直に綴っていると、先生の目がカッと見開かれた。
先生の申告する回数より5倍も多かったのである。
このところ、北小岩くんの純朴さが
年上女性の母性本能をくすぐり、
なかなかいい思いをしているようなのだ。
小林 「このまま行くと来年はお前の下半身には
 多額の税が課されてしまうわな。
 下半身の税金は累チン課税制度となっているので、
 ある回数を超えると
 急激に税額が膨らんでしまうんや。
 そうならないように、
 お前に言い寄る女がいたら、
 遠慮なく俺に相談しなさい。
 俺の方は課税の曲線が厳しくなるまで
 まだまだ余裕があるから、
 相手をしてやらんでもないで。
 それが賢い税金対策というもんやろっ!
 なっ!!」

最後は恫喝する口調になっていた。
弟子にしっかりアドバイスするのかと思いきや、
やはりこの体たらくである。
このまま先生の下半身を生かしていても
いいことはないであろう。
性税務署の方は先生のイチモツを徴収し、
競売にかけたほうが世のためである。
ただし、あまり使い物にならないので、
買い手が付かずに生ゴミとして
捨てら れてしまうことは明白であるが。

小林秀雄さんへの激励や感想などは、
メールの表題に「小林秀雄さんへ」と書いて
postman@1101.comに送ってください。

2003-12-07-SUN
BACK
戻る