小林秀雄のあはれといふこと

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。


其の九拾弐・・・平和ボケ


「まあ、そう気を落とさずに・・・」
小林先生が目に涙を浮かべてうつむいている
50代男性の肩を叩いた。

「どうなされたのですか?」
ほうじ茶を運んできた北小岩くんが、
その様子を見て思わず問いかけた。

小林 「いやな、こちらは
 金出反雄(きんだすそりお)はんといって
 剣道の師範をされている名士なんや。
 結婚して27年間、
 見事に亭主関白を貫き通してきた。
 だがな、昨昼奥さんが買い物に出かけたので
 秘伝のエロ本を取り出し
 マスをかいておったら、
 睡魔に襲われ
 そのまま熟睡してしもうたんや」


金出 「一生の不覚です。
 妻が帰宅し入室してきた時、
 私は下帯をゆるめ
 袴の脇から出したイチモツを
 むんずとつかんでおりました」
小林 「左手にはノーカットの結合写真。
 なお悪いことに、
 イチモツは朝起ち状態で
 そそり立っていたそうや。
 これから金出はんが
 家庭内で威厳を保っていくのは、
 ちょいと難しい状況に
 なってしまったんやな」
北小岩 「それは御難でした。
 わたくしの友人も、
 先頃おかあさんに現場を目撃されたそうです」
小林 「そうか。
 実は俺の親戚も、おばあさんに
 フィニッシュの瞬間を見られたと
 嘆いておった。
 そのような屈辱が頻出しとるのは、
 やはり日本が
 平和ボケになってしまった証拠やな」
北小岩 「オナニーにも平和ボケがあるのですか!」
小林 「もちろんや。
 戦後58年、平和な日本で
 緊張感のないオナニー生活を
 享受し続けてしまったために、
 日本男児は有事に対応できなくなったんや」
金出 「それを防ぐ手立てはありますか?」
小林 「今日はその道の専門家を招いておる。
 そろそろ到着する時間やが」
その時おもむろにふすまが開かれ、
おちんちん模様の迷彩色の服に身を包んだ
やけに日焼けした男が入ってきた。
小林 「すでに我が家に潜伏していたとは・・・。
 さすがですな。
 こちらがオナニー自衛隊、
 通称自慰衛隊所属の
 間酢守(マスまもる)はんや」
間酢 「いいマスかいてマスか?
 それにしても昨今の男の権威失墜は
 嘆かわしいばかりです。
 女にオナニーを見られた男は
 一生頭が上がらないばかりか、
 チンチンも上がらずに
 ナメられてしまいます。
 口でナメられるのは心地よいですが、
 頭でナメられるのはいかんですね」
金出 「ところでオナニー自衛隊というのは
 どのような活動をしているのですか?」
間酢 「あらゆる有事を想定し
 日夜厳しい訓練を積み重ねています。
 例えばオナニーの最中に
 女が侵攻して来た場合、
 着がえをしていたと
 錯覚させる必要があります。
 しかし、イチモツが天井を向いていたら
 言い訳できません。
 そこで何事もなかったかのように
 一瞬で萎えさせパンツにおさめることが
 重要になってきます。
 チン立て伏せと呼ばれる訓練ですが、
 1日に100セットは行ないますね」
北小岩 「でも、もし女性が入ってきた時に、
 エロ本を広げていたらどうするのですか?」
間酢 「飲み込みます。
 人間は鍛えるとかなりのところまで
 無謀なことができるようになるんですよ。
 私などはエロ本を飲むと
 胃が興奮するレベルにまで
 到達していますね。
 でも、もう少しで
 フィニッシュを迎えそうな時に
 無理やり止めるのは断腸の思いです。
 そこで
 しごきを続行したまま匍匐前進したり、
 屋外へ退避したりする技も
 マスターしています。
 外で見られても支障のないよう
 私のイチモツは迷彩色に塗ってあり、
 陰毛の部分には芝生を植えてあるんですよ」
北小岩 「・・・」
間酢 「万全を期しているとはいえ
 それでも抜き差しならない事態に
 追い込まれてしまった時には、
 威嚇射撃を行ないます。
 股間の25式ロケットランチャーから、
 女の瞳孔目がけて白い実弾を発射。
 ひるんだすきに逃走です。
 オナニーを見つかった時、
 何が辛いかといえば、
 あの何ともいえない沈黙と
 よそよそしい態度を取られることが
 苦痛なのです。
 ですが射撃しその場から逃げ切れば、
 女もこの男は窮地に陥っても
 自分で道を切り開いていける
 逞しさがあると感服します。
 その後も女とイーブンの立場で
 交渉することができるのですね」
小林 「なるほど、完璧や!
 どうでっか、金出はん。
 オナニー自衛隊に体験入隊してみまへんか?
 私と北小岩は入隊を決めました」
金出 「そうですね。
 私も入ります。
 これからは気を引き締め、
 なんとか亭主関白の地位を
 奪還したいですからね」
間酢 「気を引き締めると同時に、
 お互いイチモツも
 引き締めていきたいものですな」
金出
小林
北小岩
間酢
「あはははははは」

オナニー自衛隊などという馬鹿げた組織に所属しなくとも、
各自が細心の注意を払って
オナニーにいそしめばよいだけの話だろう。
だいたい大の大人が4人も集まって、
くだらないオナニー談義で喜んでいること自体が、
日本の平和ボケの最たるものであろう。


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2003-06-29-SUN

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