カベンタケモドキ
食不適
写真と文章/新井文彦

きのこファン歴がけっこう長くなりましたが、
ぼくは、進歩がないというか、成長してないというか、
かわいかったり、きれいだったり、不思議だったり、
あるいはちょっと気持ち悪いきのこを見つけたとき、
じっくり観察ができて写真を撮れれば大満足なんです。

名前がどうのこうの、分類がどうのこうのとかは、
まったく興味がないわけではありませんが、
二の次、三の次、なんですよねえ……。
ですから、この写真のきのこが、
もしも、カベンタケだったとしても、
まあ似てるから仕方ないか、で済ませちゃいます。
あしからず。

でも、今回に限って言うなら、
このきのこは、間違いなく、カベンタケモドキです!

見た目がほとんど同じ、
カベンタケと、カベンタケモドキを同定するには、
顕微鏡を使った観察が必要不可欠。
つまり、シロウトが見分けるのは、ほぼ不可能です。

では、なぜ、ぼくが、今回ご紹介するきのこを、
カベンタケモドキだと断定しているかというと、
知り合いが顕微鏡で同定したから(笑)!

とはいえ、きっぱり断言したところで、
写真を見るだけではどちらのきのことも、
判断することも検証することもできないわけで、
そうなるともう、言った者勝ち、の世界です(笑)。

カベンタケと、カベンタケモドキは、
夏から晩秋にかけて各種林地で発生することも、
真っ黄色で棒〜ヘラ〜舌〜花びら状の形も一緒。
(カベンタケモドキは北緯35度以北に多いとか)
じゃあ区別する必要なんかないじゃん!
と、普通は思いますよね。

ところが、これが、まったく別モノなんです。
カベンタケは担子菌で、
(胞子が担子器という器官でつくられる)
カベンタケモドキは子嚢(しのう)菌。
(胞子が子嚢という袋の中でつくられる)

我々が、いわゆる「きのこ」と呼んでいるものは、
胞子をつくって放出する生殖器官であり、
きのこの最重要器官だと言っても過言ではありませんが、
そのしくみの根源がまったく違うわけなんですねえ。
きのこ、恐るべし。

一般的には、カベンタケは食用とされ、
(別に味がいいわけではありません!)
カベンタケモドキは、毒性は無いようですが、
食不適とされています。

観察するにせよ、食べるにせよ、写真を撮るにせよ、
きのこの楽しみ方は、人それぞれ、十人十色。
フィールドできれいなきのこを見つけたときの、
何物にも代えがたい、ドキドキ、ワクワク感は、
カベンタケであろうがカベンタケモドキであろうが、
何ら変わることはありません、はい。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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