マンネンタケ
食不適
写真と文章/新井文彦

北海道東部に位置する阿寒湖は日本有数の寒冷地。
もちろん、内地とは比較にならないくらい、
そりゃあ快適な夏を過ごすことができるのですが、
たまに気温が30度近くに達することがあります。

内地の人には怒られちゃいますが、
この昼間の暑さがツライんですよねえ……。
冬なら厚着をすれば寒さに耐えられますけど、
夏だと服を脱ぐにしても限界がありますから。

阿寒湖の住人は、気温が25度を超えたら、
もう暑くて仕事したくない!って思ってます(笑)。
(でも、冬は−30度だろうが仕事をします!)

と、いうことで、阿寒湖周辺で、
気温が25度を超えるような酷暑(笑)をしのぐには、
阿寒湖、ではなく(水温もけっこう高いです)、
森の中をひっそり流れる清流へ行くに限ります。
なんせ、真夏でも、水温は10度以下!

長靴をはいて小さな沢の中をじゃぶじゃぶ歩き、
迷わず、とある場所を目指します。
ミズナラの腐った倒木に真っ赤なきのこを発見!
そう、毎年、マンネンタケ(霊芝)が生えるんです。

何でも、その昔の昔、
古代中国では、一般人が霊芝を見つけようものなら、
すぐさま皇帝に献上しなければならなかったとか。
縁起物で、すぐれた薬効があるとなれば、
そりゃあ、権力者は欲しがりますわな。

あの日本書紀にも記載があるとかで、
日本でも古くから知られていたみたいですね。
江戸時代の書物『日本山海名産図会』には、
「芝」「霊芝」と並んで「さいわいたけ」の記述も。
薬としての用途以外にも、やはり縁起物として、
各地で用いられていたようです。

マンネンタケは、夏から秋にかけて、
広葉樹そのもの、または、その地面から発生します。
傘はだいたい直径10〜15cmくらいの半円状。
表面は、最初のうちは白〜黄色で、成長するにつれ、
ニスで塗ったようなぴっかぴかの赤褐色に。
傘の裏側は無数の細かい穴が開き、白〜肉桂色です。
扇子で言うところの要(かなめ)の部分に、
長さ4〜10cmくらいの太くて立派な柄があります。

自然状態の成菌は重量感あるコルク質。
サルノコシカケの仲間なので多年生と思いきや、
発生してから1〜2か月くらいで、
虫に思いっきり食べられるか、腐るかして、
ぼろぼろになってしまいます。
採取して乾燥させると水に浮くくらいカラカラに。
万年でも保つような長期保存が可能になります。

食不適。
薬効が高いとされているので、
煎じて呑んだりする場合は多々あるようですが……。

ちなみに、このマンネンタケは、
「きのこの話」で以前にご紹介した個体と、
まったく同じ場所で撮影しました。
いつも会えるのを楽しみにしています。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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