これは、食毒不明なんです。
ドクツルタケ
猛毒
写真と文章/新井文彦

きのこ探しは関係なしに、森へ行くことは、
のんびりできるのでリラックス効果が高いと、
ここで説明するまでもなく皆さんご存知かと。
のうのうとした穏やかな気分になれますよね。
話を大きくするわけではありませんが、
五感を総動員して森を「体験」する楽しみを覚えると、
周囲のものがみんな宝のように思えたりするので、
年がら年中、森へ通わずにはいられません……。

とはいえ、何度も書いておりますが、
阿寒などなど、森の天然度?が高ければ高いほど、
楽しみやワクワク感が大きいのですが、
比例して、不快さや、危険度も格段にアップ。
時として、死に関わることだってあるので、
しっかりとした経験を積むまでは、できれば、
慣れている人に同行してもらうのがいいと存じます。

ちなみに、阿寒をはじめ、
北海道のアウトドアフィールドで、
(北海道に限ったことではありませんが)
時として命に関わる最も危険な生物は、
クマさんではなく、スズメバチです!
ご用心、ご用心。

野外活動で、危険とか、死に関わるとか、
そんな言葉が出てきたら、忘れちゃならないのが、
あの、泣く子も黙る猛毒植物のトリカブトに並んで、
我らが毒きのこでございます。

今回ご紹介するドクツルタケは、
日本一の毒きのこ!と言っても過言ではない、
毒きのこ中の毒きのこです。
毒が日本一なら、美しさも日本一!
と言いたくなるような、純白のきのこ。
英語名の、Destroying Angel(=死の天使)は、
ほんと、言い得て妙ですな。

ドクツルタケは、夏の終わりから秋にかけて、
針葉樹、広葉樹、いずれの樹下でも発生します。
トドマツが生い茂るやや薄暗い森の底に、
ひとつふたつと生えているドクツルタケは、
まさに宗教画に描かれた天使のよう。
ため息が出るほど美しいです。

傘は円錐形から平らに開き、
直径は、大きなもので20cmほど。
湿ったときは表面が多少ぬめぬめします。
傘裏のヒダももちろん真っ白け。

高さは15〜25cmくらい。
上部に膜状のツバを持つ柄はしっかりと弾力があり、
上質のシルクを思わせるようなダンダラ模様が。
テングタケの仲間なので、柄の根本には、
外皮膜のなごりである膜質のツボが見られます。
(この写真ではコケに埋もれてますが)

もちろん、絶対に食べるべからず。
即効性、遅効性、両方の毒成分を持ち、
すぐさま膜を、じりじりと細胞を破壊する、
といった、見事なまでの二段攻撃で、
肝臓、腎臓に重大な障害を与えるのだとか。
1本食べたら、ほとんどの場合、死に至ります!
食べたら、死にます!

発症までに6〜24時間くらいかかるらしいですが、
すでに体中に毒成分が回っているわけで……。
ひいい、恐ろしや。

とにかく、テングタケの仲間の、
白くて大型のきのこには猛毒を持つものが多いので、
くれぐれもご注意を。

そうそう、北海道のアウトドア活動では、
鈴など音の出るものを持つこと(ヒグマ対策)、
黒っぽい服装を避けること(スズメバチ対策)、
この二つを、ぜひぜひ心がけてください。

ドクツルタケの登場は今回で2回目です。
前回分はこちらをご覧あれ。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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