オウバイタケ
食不適
写真と文章/新井文彦

同じエリアで何年もきのこの写真を撮っていると、
あまり意識しなくても、知らず知らずのうちに、
あの場所にそろそろあのきのこが生えてきそう、
この場所にそろそろこのきのこが生えてきそう、
と、おおまかな発生予測ができるようになります。

しかし、最近では、
そんな予測が外れることもしばしば。
あるきのこはたくさん生えているのに、
あるきのこはまったく見かけない、とか、
きのこの生態が心配になっちゃいます。

降雨(雪)量が、極端に多かったり、少なかったり、
最高気温、最低気温が、極端に暑かったり寒かったり、
気象の変動の幅が大きくなっているのが、
ちょっとだけ気になりますな。
地球温暖化のせいなのかどうかはわかりませんが……。

きのこはカビの仲間というか、カビそのものなので、
(目に見える子実体をつくるのが「きのこ」です!)
雨が多くてじめじめなら発生量が増えるかというと、
そんな単純なものでは決してないんですよね。

知り合いの専門家に聞いてみると、
すぐ直前に降った雨は、きのこ(子実体)の形成に、
それほど影響を与えているわけではなく、
10〜30日くらい前に降った雨の方が、
影響力があるのだとか。
なるほど、なるほど。

と、いうことで、
9月のとある木曜日の雨の日に、
いつものコケコケの森へでかけました。
コケの間に、オウバイタケ、見っけ!
雨粒がついて、宝石のようです。

オウバイタケは、夏から秋にかけて、
アカエゾマツなどの枯れた落葉から発生。
いくつか集まっている姿は、高貴な感じすらします。

傘は釣鐘形、直径は大きいものでも1cmほど。
てっぺんが橙色、その周辺が黄色で、
湿っているときにはくっきりとした条線が見られます。
ヒダは白く、柄は淡黄色〜白で、高さは5cmほど。
ちょっと触るだけで、ぽきりと折れてしまうほど、
華奢なきのこです。

食不適。
当然ですな。
小さいし、華奢だし、数も集められないし、
きっと食べても何の感動もないと思います……。

昨今では、レインウエアの性能はいいし、
カメラの防塵防滴も強化されているので、
たまには雨の中、森へ出かけるのも乙なものです。
木々の葉っぱがいきいきとして、きれいなこと。
そして、きのこも、輝いています。
長靴で歩く森も、また、楽し。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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